《MUMEI》
7
彩が取調室に入ってくると、片瀬晴久は驚きの表情を浮かべた。

「まさか君が来るとは思わなかった」

「片瀬さん・・・」

「君、刑事じゃないよね? 婦警チャンも取り調べするんだ」

「片瀬さん。言葉には気をつけてください」彩が睨んだ。「ふてぶてしい態度を取ると、罪が重くなることがありますよ」

しかし片瀬は笑う。

「でも情状酌量の余地はあるでしょう。それは君がいちばんよくわかっているはずだ」

「ええ、情状酌量の余地は十分にあります」

彩の言葉に、片瀬は目を丸くした。

「片瀬さん、二度と女性にこういう悪さをしないと誓えますか?」

「・・・僕は、懲役何年くらいになるのかな」

彩は口を真一文字にして片瀬を真っすぐ見る。片瀬はその魅力的な表情に思わず見とれてしまった。

「片瀬さん。二度と悪さしないとここで誓ってくれたら、今回だけは初犯ですし、罪を許すことも検討しているんですよ」

信じられないセリフに、片瀬は目を見開いた。

「・・・え?」

「被害者は今のところ、あたしだけだし、あたしにも落ち度はありましたから・・・」

「君に落ち度なんかないよ。悪いのは僕なんだから」

「では、二度と女性に悪さしないと誓いますか?」

「誓います、誓います」片瀬は真剣な顔で言った。

「信じますからね。でも、監視はさせていただきます。今度やったら、そのときは容赦しませんからね」

あれだけの罪を犯しておいて、許されるのが信じられなかったが、片瀬は出れると思うと歓喜してきた。すぐに自由の身になれる。

「もちろん、二度としません。婦警さん。一生恩に着ます」

「あたしにそんな権限はありません。刑事課長に言ってください」



こうして、片瀬晴久は釈放された。彩の身を守るためには仕方なかった。彩は一週間の休暇をもらった。精神的ショックは大きいだろうと察知され、すぐに快諾された。

しかし、家で休むための休暇ではなかった。彼女は責任を深く感じていた。もしも片瀬が再び同じような犯行を重ね、今度は一般の女性が被害に遭ったら・・・。

それを考えると、自分が監視するしかないと思った。

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