《MUMEI》
絶体絶命 1
アパートに帰り、シャワーを浴びる彩。汚された体を入念に洗った。いや、本当に汚されたのだろうか。彼女は自問自答した。

まんまと罠に落ちたのか。それとも、罠かもしれないと知っていながら、裸でマッサージベッドに寝たのか。

「・・・・・・」

女なのだ。Mというのは決しておかしくないし、変態ではない。Mにとっては、たまらないシチュエーションなのだ。手足を拘束されて無抵抗の状態で、エッチな意地悪をされてしまう。

「やめて」と哀願してもやめないで、とことんいじめられる。死ぬほど気持ちいい目に遭わされて、最後は不覚にもイカされてしまう。

自分が一般人ならいい。しかし彼女は婦人警官なのだ。自分が責任を感じて監視をしている男に弄ばれて、喜んでいたら警察官失格もいいところだ。

「でも待てよ」

あれほどの変態ドSが自分の趣味を我慢できるだろうか。彩が行っている間は、ほかの女性に危害が及ぶことはないのかもしれない。

それでは自分は犠牲になっているのか。それは違う。Mだからこそ務まる特殊任務だ。彼女は無理やり大義名分を持ってきて、罪悪感を消そうとした。

「それに・・・」

片瀬晴久はそんな大悪党ではない。ちゃんと許してくれるし、痛い目に遭わせたり、乱暴なことはしない。でも、無抵抗の状態にされるのだから、レイプだけは気をつけないといけない。

無抵抗ということは、犯されても何もできないということだからだ。



彩は翌日も海の家へ行った。店をしまう直前に行く。純白のビキニが挑発的で、片瀬のもともとないに等しい理性は、完璧に弾けた。

「かわいい・・・」

「こんばんは」

「こんばんは」片瀬の目が丸い。

やや照れた顔をすると、彩は言った。

「女の子に悪さなんかしてないでしょうね?」

「大丈夫。婦警さん以外はまじめなマッサージチェアにしかすわらせないから」

「それどういう意味?」彩は唇を尖らせた。「あたしにだって悪さしちゃダメよ」

「ハハハ、そうでした」

彩は店じまいを手伝いながら話した。

「あたしだって女の子なんだから。あなたのことを信じて手足を拘束されるんだからね。この前みたいに裏切ったらねえ、逮捕するよ」

「ハハハ」

「本気よ」彩は笑顔で睨む。

水着姿でこれほど親しく接してくれる。片瀬は舞い上がっていた。嬉しくてたまらない。彩の美ボディを無遠慮に見ると、言った。

「それにしても婦警さん、セクシーだよね」

「何も出ないよ」

「本当に見事な美脚美ボディだよ。これほど美しい女性は見たことない」

「よく言うよ」彩は赤面した。「そこまで言ったらお世辞とバレちゃうよ」

「お世辞じゃないよ。君は本当に魅力的だよ。かわいくてかわいくてたまらない」

真剣に言われると逆に怖い。彩は身の危険を感じておなかに手を当てた。

「婦警さん」

「何?」

「何か飲む?」

「眠り薬が入ってないならね」

「今さら眠り薬は必要ないでしょう」

何かひっかかる言い方だ。

「どういう意味よそれ? きょうは裸になんかならないわよ」

「・・・まあ、どうぞ奥へ」

「片瀬さん。あなたを信用して、こうして男の刑事も連れずに一人で来てるんだからね。変なことしちゃダメよ」

「せっかく罪を許してくれたのに。そのご恩は忘れてないから大丈夫」

「ホントかなあ」

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