《MUMEI》
6
全裸で大の字に拘束されている彩を、片瀬は危ない目でながめていた。

「美しい・・・」

感嘆すると、魅力的な美ボディをさわり、豊かな胸をやさしく揉んだ。

「あ・・・やめて」

片瀬はやめない。彼女の秘部を弄り、クリトリスを刺激する。

「あん、やめて、やめてお願い」

「かわいい」片瀬は正気を失っていた。「たまらない。これほど美しい裸体を見たことがない。誰にも渡さないよ」

怖い。怖くてたまらない。彩は不安な顔色で身じろぎした。

「さやかチャン。このベッドは便利でね、キャスターがついているんだよ」

「キャスター?」

片瀬は満面笑顔でリモコンを操作すると、いきなりベッドを押した。

「え?」

ベッドが動く。片瀬はそのまま倉庫を出ようとする。彩は赤面しながら慌てふためいた。

「片瀬さん、ちょっと待って、何をするの!」

片瀬は笑顔で無言。危ない。ベッドは外に出た。海から来る風が彩の裸を撫でる。彼女は真顔で哀願した。

「やめて、戻って、人に見られたらどうするの、恥ずかしいじゃない!」

素っ裸で大の字に拘束されているのだ。こんな恥ずかしい姿は誰にも見られたくない。それに公然わいせつだ。

片瀬はベッドを完全に外に出してしまうと、言った。

「さやか、僕と結婚して」

「・・・・・・え?」

「結婚したい」

かなり良くない展開だ。彩は天に助けを求めた。

(助けてください、お願いします)

「さやか。答えはNOだね?」目を見開いて聞く。

「待って、NOなんて言ってないよ」

「僕のような変態と結婚する物好きな女性はいないよね」

「お願い待って。怒らないであたしの話を聞いてくれますか?」

「もちろん聞くよ」

彩は深呼吸すると、言った。

「ちゃんとプロポーズしてくれますか? あたし、裸で無抵抗なんですよ。これでは脅しでしょ」

「答えはNOだね?」怪しい笑顔。

「待って。一旦部屋に戻りましょう。そこでちゃんと話し合いませんか。大事なことなんだから」

「答えはNOか。仕方ない」

片瀬はベッドから手を離すと、背を向けて、倉庫のほうに向かって歩き出す。彩は叫んだ。

「ちょっと待って! 置き去りだけは勘弁して! 待ってよ!」

片瀬は倉庫に入ってしまった。彩は周囲を見渡した。人はいないが、遠くでバイクの爆音が聞こえる。まさか暴走族か。素っ裸で手足を拘束された状態で、暴走族に囲まれたら泣くしかない。

「ヤダ・・・どうしよう?」

まさか本当にこのまま置き去りにするつもりなのか。黒いハンドにガッチリ押さえられているから、自力ではどうしようもない。

胸のドキドキが止まらない。片瀬を信じるしかなかった。必ず戻って来るはずだ。

「あっ」

片瀬が戻って来た。彩は無理に尊敬の眼差しをつくり、片瀬を見つめた。

「さやかチャン」

「はい」

「気持ちは決まったかな?」

「はい。YESです」

「この場しのぎの偽りのYESだね」

「違います、違います、本心からのYESです」

片瀬は彩のおなかに手を置くと、危ない顔で言った。

「どこまで僕をバカにすれば気が済むのかな」

「え、何でそういうこと言うの? あたしがほかの男に犯されてもいいの?」

「良くないよ」

「じゃあ倉庫に戻って」

片瀬晴久はじっと彩を見ていたが、ベッドを押して、倉庫に戻った。

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