《MUMEI》
目覚めぬ理由
「……?」

「あっ、随分と早かったね。

紅……全然話さなかった?」

「あ、いや、別に……?」

目を開くと、紅と居たような

和室に居た。

だが、今度は紅ではなく蒼が居た。

「ある事をすれば、少しだけ

自由に出来る事は聞いた?」

「うん」

「ある事っていうのは……」

蒼は、にこっと笑顔を見せる。

「紅と僕の話を理解する事だよ」

「それだけ……?」

「いや、僕らは君主だけども

その肩書きと住居があるだけ。

だって、物理的に生きてないから

食べる必要も何もないからね」

「そっか……ちなみに、

その話って?」

「この世界の原理と、君は

何があろうと帰られない事。

この二つかなぁ……」

また、笑顔で言う。

その笑顔は少しだけ、

怖く感じた。

「まぁ、この世界は夢。

君は、此処が現実になるけどさ。

ただ、痛いとか苦しいだとかは

自分が感じたければ感じられる。

ただ、何をしても死ねない。

分かった?目覚められない理由は

君は選ばれたけど、この夢は絶対に

完結は出来ないであろう夢だから。

帰れない理由は本当にそれだけ。」

「……ねぇ」

「どうしたの?」

「選ばれたって……なに?

紅にも言われたけど」

「夢は主人公が見る。

この世界なら桜花ちゃんね。

だけど、夢は主人公が造り出して

見るわけじゃない。創造主が別に居る。

だけど此処には不明なんだ。

夢は創造主が主人公に与えるけど、

桜花ちゃんに見せる理由も知らない。

僕らは……ただ、創造主が主人公に

ずっと居て欲しいと願ったみたいだから

その願いに従って存在してる。

分かった?」

淡々とした文章を義務的に

すらすらと告げる。

世界に慣れてきたのかは知らないけど

何故か、ちゃんと頭に内容が入った。

「……分かった」

何で、そう言えたんだろうか。

「そう?じゃ、少しだけ……

……自由に飛べるようにしようかなぁ」

「と、飛ぶって……どう言う事?」

「そのまんまの意味。

早速、外に行こっか!」

また、同じ笑顔を見せた。

そして視界が暗転する。

「あれ……?」

いつの間にか、最初に居た場所に居た。

「……あぁ、来たか」

「待たせちゃったかな、紅?」

「別に。暇だし……」

「空、飛べるようにしたけど

良いかなぁ?」

「どうせ、空の帝に会わせるし

構わないけど?」

「あっ、そっか。忘れてた……」

「……忘れてないくせに」

「あははっ、分かる?」

「桜花が話の置き去りに

なってるけど、いいのか」

「ぁ、良くないよね。

じゃあ桜花ちゃん。

飛べ、って念じてみようか?」

「え、えっ?」

訳も分からぬまま、とりあえず

念じてみた。すると、

背に桜色の大きな羽が

付いていた。

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