《MUMEI》
臆病者の魔姫
そこは…暗かった。日が射していないということではなく、太陽は出ているが…世界自体が暗い、そんな感じだった。

そんな世界で生きている生物は…魔獸、魔鬼、魔人など…それらを統べる頂点に君臨する者は、俗に…魔王などと呼ばれる存在…名を…シギ、魔王の三代目、代々、魔界を統一してきた。

力は並外れ、頭は切れ、子に恵まれた…だが、この子供が問題だった…魔王に関わらず性別は女性、更に性格は温厚で、何かを自ら傷付けるという行為すらしようとしない、魔王としての素質はあるものの、このままでは安心して後を任せることができない、だが、シギを悩ませる理由はもっと他にあった…

今日も魔王は悩む。実の娘の事で…

「…こればかりはなぁ…力ではどうしようもない…」

いつもならば力を少し使うだけでカタがつくが性格はどうしようもない魔界の王は、王に似合わない深いため息が今にも出てきそうだった。

「そういえば、あいつ今日もあそこに行くっつってたな…全く…出来れば性格をもう少し変えて帰ってきてくれ…」

あらか様に変な考えを思いつつも、また魔界の王は自分の娘のことを考え始めた…
† 海のようだが、色は黒く、見る者を吸い込むような漆黒の海面をただ…静かに見つめる影が絶壁にただ、立っていた……影は女性だった、

その女性の名は…ミスア、魔王シギの娘だ、よく見ると彼女は小さく震えていた、何に恐怖する訳でもなく、ただ…震えていた、そして彼女は、震えているにも関わらず、誰をも寄せ付けないような、圧倒的な威圧感を滲み出していた…魔王の娘だからこそ、出来ることだが、彼女は自分のこの能力が好きになれなかった。

魔王の娘というだけで誰も近づこうとしない、みな、恐れているのだ。

だから今まで彼女は…友と呼べるものをつくったことがなく、友達とは何なのかすら、解らなかった…自分を産んでくれた親には感謝している、だが、感謝している分、彼女は期待に応えられない自分に腹が立った、いっそのこと…魔界を出ようかとも、考え始めていた…。

「ああ…本当に、この世界から…出て行こうかなぁ…ここじゃ私、何もないし…ああ!もう!!何かキッカケがあればいいのに!」

そんな自己嫌悪的な独り言をぼやいていると、暗い空に一粒の光が出てくるのが見えた………… 触れば全てのものが、笑顔になるような不思議な光だった………

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