《MUMEI》
火をプレゼント
 警備隊に潜り込んだユウゴとユキナは一つ、一つ教室へ入り、いるはずのないユウゴたち自身を探した。
「ちっ。いねえな。どこ隠れやがった」
二階の最後の部屋へ入った時、苛立った様子で警備隊の一人が呟いた。

 ユウゴはユキナと視線を合わせ、二人だけその教室からこっそりと抜け出る。
そして、ガスボンベとチャッカマンを取り出した。
「おい?何してる」
二人の動きに気付いた一人がこちらを振り向く。
「いや、なにって、火をプレゼントしようと思ってさ」
ユウゴが言うと、相手は眉を寄せた。
「はあ?」
「じゃあな」
「さようなら」
ユウゴとユキナは同時に、ガスボンベを噴射してチャッカマンに火をつけた。

ゴオっという音と共に、教室内に業火が噴き荒れる。
ユウゴは悲鳴が響き渡る教室のドアを力いっぱい閉める。
ユキナも同じように一通り火を噴き終えると、走って後ろのドアを閉めに行った。

 ドアや窓に衝撃を感じたが、銃を撃ってはこない。
おそらくそれどころではないのだろう。
しばらくそのままドアを押さえて待つ。
やがて悲鳴もドアを叩く衝撃も消えた。

「……やった」
興奮なのか、恐怖なのかよくわからないが、ユウゴは自分の声が震えていることに気付いた。
「ユウゴ!危ない」
ユキナの声にハッと後ろを振り向く。
同時に体に衝撃を受けた。

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