《MUMEI》
恋人
静かな部屋に聖羅の声が響いた。
佐山が「なッ…」と声を漏らした。
「とにかく私達はお兄ちゃんが心配なのよ。明日も仕事先に行くからね!」
と聖羅が言った。
「ちょ…!辞めてくれよ!店の皆にも迷惑が掛かるんだよ。」
と佐山。そんな佐山を無視して聖羅が答えた。
「今日のあの中にお兄ちゃんの恋人はいないみたいだねェ〜。あの髪長い人もちょっと違うみたいだし。」
「はぁ?お前勝手な事言うなよ!」佐山が怒った。
「あの感じならあの人はお兄ちゃんに気があるみたいだけど…。お兄ちゃんは他に好きな人でもいるの?」
「聖羅!!」 佐山は叫んでしまった。そしてそれでやっと聖羅が黙った。
「…悪い…。でもお前には関係無い事だ…。わかって欲しい。」
「関係なく無い!!私はお兄ちゃんが…!」はっとしたのか、聖羅はそう叫ぶと黙り込んでしまった。
佐山は…あることを思い出していた。実家を出る時に聖羅が自分にいった事を。

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