貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》音楽。
わたしたちの間には、常にゆったりとした時間が流れてる。
アキの好きなクラシックの名曲も、居心地は悪くないみたい。
この部屋には高そうなオーディオセットがある。
その脇には、大きめのCDラックがほのかに存在感を放って居る。
綺麗に整理されたCDは、クラシックが6割、あまりメジャーではないロック系バンドが3割、あとはわたしが持ち込んだものが数枚。
わたしたちが出会ったあの日も、アキはやはりクラシックのCDを探しに来たらしい。
「試聴してたら、あんたが視界に入ってさ、なんか顔色悪いし、カウンター見て目ぇまん丸くしてるしで、気になってしょうがなかったよ。『大丈夫か!?』って」
アキはそのあと、試聴を取りやめてわたしの元へ駆け寄って来たらしい。
わたしは朦朧としながらも、アキの助けを借りて何とか買い物を済ませたと云うのだけど、全く覚えて居ない。
…まぁ、だからわたしたちは出会えたんだから、結果オーライなんだと思う。
あの時アキが試聴して居たCDが、数ヶ月を経てここに仲間入りした。
「思い出しちゃうから、どうしても優雅な気分になれないわ」
と、笑いながら云うアキ。
…アキ、
この曲はわたしたちを繋いでくれたと云っても過言じゃないよね。
きっと忘れることはないよ。
大事な曲だから。
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