《MUMEI》

 広間に入ると、既に朝食が用意されていた。焼き鮭に白飯、味噌汁に煮物と、いずれも美味しそうな物ばかりである。
机を挟んで座り、早速食べ始めた。

「うん、おいしい! 陸奥守は料理が上手なんだね」

 まさごは陸奥守の作った料理を褒めるが、陸奥守は首を横に振り否定する。

「主にもろうた書物のお陰じゃ。わし一振りの力がやない」
「そう? 僕はレシピを見ても失敗しちゃうなあ」

 塩少々とか分かりにくくて、と言いながら、まさごは苦笑する。どうも、味付けの加減が彼には難しいらしい。すると
陸奥守もそれに同調し、2人の会話が弾んでいった。
 大根の皮を剥くのはどうしたら上手く出来るかや、玉ねぎを切るとき目が痛くなるのはどうすれば防げるのかなど、誰
もが一度は悩んだであろう話で、2人の間は盛り上がった。

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