《MUMEI》
素っ裸にされた美女 1
夕方の渋谷ハチ公前。

きょうも大勢の人が集まり、待ち合わせだろうか、数えきれない男女がハチ公の周りに立ったり、すわったりして、辺りを見回したり、スマホを見たりしている。

(クックック、美女狩り開始)

太った眼鏡の男が、標的を探すように若い女性を物色する。

(おっ、いいね、いいね)

スマホの操作に夢中で、周囲が見えていない女性に目をつけた男は、彼女のデータを見る。

(名前は績中まおみ。珍しい苗字だな。身長165センチ、34歳)

きれいな長い髪は明るい色に染め、センスを感じる。

薄着だから豊かな胸が強調され、短パンなので見事な美脚がたまらない。

(これだから真夏は好きだ。アンヨフェチの僕の目の前で美脚を見せるとは、犯されても文句は言えないよ、ククク)

34歳は、大人の魅力が増し、一番いい時期かもしれない。

10代には出せない色香が漂う。

(スリーサイズは、80・59・88か、スタイル抜群。これならみんなも喜ぶであろう、むふふふ)

男は彼女に歩み寄り、いきなり声をかけた。

「カーノジョ」

「え?」まおみは、一旦後ろを振り向いてから、男を見た。「何ですか?」

「彼氏と待ち合わせ?」

「待って、その前に、あなたは何?」と嘲笑気味の笑顔。

「そんなつれない態度取らなくてもいいじゃない、勇気を振り絞って声をかけてるわけだからあ」

まおみは男の服装を無遠慮に見る。白いワイシャツに紺のパンツにノーネクタイ。

「もしかしてナンパ?」

「あれ、今その顔でって心の中で呟いたでしょう?」満面笑顔で聞く怪しい男。

「別に」

「ヒドイなあ、初対面で不細工とは」

「言ってないじゃない、そんなこと」まおみは、ややムッとした。

「これがナンパ以外何に見えるの。トーストを焼いているように見える?」

「無理無理、ギャグで何とかしようと思っても、あなたの場合はちょっと厳しいかも」

「どういう意味? いきなり教育的指導?」

まおみは笑顔のまま話した。「彼女が欲しいんなら、婚活パーティとかに参加したほうがいいと思いますよ」

「何その上から目線」男は笑顔のまま怒った。「少しくらい美人だからって男をバカにするとは、そんな慢心女は大衆の面前で赤っ恥かかされても、罪悪感ゼロ!」

突然叫びながら人差指を上げてポーズを取る男。

「何それ、逆ギレ? 一歩間違うと脅迫罪になりますよ」

「大丈夫。これから脅迫罪以上のことが起こるから」

男のセリフに、まおみは焦って警戒した。

「ちょっと、やめなさいよ」

「ぐふふふ」

男が笑いながら二歩三歩と下がるので、まおみは少し安心した。

しかし次の瞬間、男は両手を前に出しながら回して、「ちちんぷいぷいスッポンポン!」

「え?」

まおみの服は一瞬にして消えて、彼女は素っ裸にされてしまった。

「ぎゃああああああああああ!」

彼女は顔面蒼白になり、慌てて両腕で胸を隠し、しゃがみ込んで下を隠した。

「きゃあああああ! いやあああああ!」

本人も何が起きたかわからない。

周囲も若い美人の女性が全裸で泣いているので、大騒ぎになった。

「え、何何?」

「何であの子裸なの?」

「ヤダ、助けて・・・」

真っ赤な顔で号泣している彼女を、男は遠くから見ている。

皆全裸女性のほうに注目するから、眼鏡の男の存在には気づかなかった。

(かわいい! 生意気娘が困り果てる姿はたまらん、にひひひ)

紳士な男性もいて、Tシャツの上に着ていたシャツを素早く脱ぎ、彼女の体にかぶせた。

すぐに数人の警官が走って来た。

まおみは恐怖に震えて、警官が声をかけても返事ができない。



大衆の面前で女性を全裸にして置き去りにするという、とんでもない強制わいせつ事件が起き、警察も捜査に乗り出したが、被害者の女性は入院中。

ショックがあまりにも大きく、「誰にも会いたくないし、何も話したくない」と看護師に訴え、聴取できないでいた。

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