《MUMEI》 4(きょうも楽しい美女狩りだあ、美女狩りだあ) 田口貫平は、罪悪感を0%にするために、わざとダサい服装で街へ繰り出す。 チェックのシャツにジーパンだが、思いきりシャツをインして六本木の交差点を歩く。 眠らない街・六本木。 平日だというのに、まるで金土の夜のように、大勢の人が歩いていた。 外国人の姿も多い。 (さあて、かわいい子、かわいい子、お、いたいた) とびきりにかわいい女の子がゆっくり歩いている。 いつものように田口貫平は、彼女のデータを見る。 (名前は、金本玲、25歳。身長157センチ、スリーサイズは74・56・77) 華奢な女性が好みの田口は燃えに萌えた。 真夏らしく思いきり薄着で、タンクトップは伸びをしたらおへそが見えそうだ。 ミニスカートに裸足に洒落たサンダル。 「カーノジョ」 「え?」 「僕とお茶しない」 「はあ?」 いきなり露骨にコバカにした態度を取ったので、田口はほくそ笑んだ。 「はあとか言っちゃダメでしょう。勇気を振り絞って声をかけてるんだからあ」 「もしかしてナンパしてるつもり?」 「これがナンパ以外、何に見える? バーベキューに見える?」 彼女は真顔になると、聞いた。 「おじさんいくつ?」 「おじさん!?」田口は驚いて見せた。「48歳の青年をつかまえておじさんはヒドイなあ」 「十分おじさんじゃん」 「40代はまだまだ青年だよ」 彼女は面倒くさそうな顔をすると、蔑みの目になる。 「家に鏡ある?」 「あれれ」田口は喜んだ。「言ってはならない最後の言葉を言っちゃった?」 呆れた表情の彼女を笑顔で見ながら、田口は人差指を上げてポーズを取る。 「罪悪感ゼロ!」 「はあ?」 「君がもしも思いやりに溢れたいい子なら、酷いことするのは罪悪感が湧くけど、意味もなく男を蔑む悪い子なら、大衆の面前で赤っ恥をかかせても、罪悪感ゼロ!」ともう一度ポーズ。 「はい、脅迫罪成立。警察行きましょう」と彼女は田口の腕をつかむ。 「腕を放しな」怪しい笑顔。 「交番直行だよもちろん」 「腕を放さないと裸にするよん」 「殺すぞテメー、そういうこと言ってると」 凄む彼女を笑顔で見ると、田口は腕を素早く振りほどき、両手を向ける。 「ちちんぷいぷいスッポンポン!」 「え?」 次の瞬間、彼女の服も下着も全部消えて、素っ裸にされた。 「ぎゃああああああああああ!」 突然の悲鳴に、皆は焦って声がしたほうを見た。 何と、若い女性が全裸でしゃがみ込んでいるではないか。 「何あれ」 「嘘、裸じゃん」 「いやあああ・・・ヤダ・・・」 号泣する彼女を遠くからながめながら、田口はその場を去っていった。 警視庁の部屋は、暗い空気に包まれていた。 二人目の犠牲者を出してしまった。 連続事件となると、早く犯人を逮捕しないと、次々に犠牲者が出ることになる。 「何て酷いことを・・・」明が怒り心頭だ。 「被害者の共通点はあるかな」福三新治が冷静に言った。 茉優が答える。 「一人目の績中まおみさんは、34歳。二人目の金本玲さんは、25歳。年齢は違うか」 「髪型の特徴とかは?」重本瀧文が聞く。 「績中まおみさんは長い髪。金本玲さんは、短めの髪。でも二人とも茶髪です」 「でも犯人は彼女たちの年齢を知らないわけだから、若い美人っていうくくりもできる」 その場にいた目撃者は、やはり犯人よりも全裸の女性のほうへ目が行くので、怪しい男を覚えている人はいなかった。 再び防犯カメラを見る。 六本木の交差点は人で混雑している。 その中で被害者の金本玲を見つけた。 「あっ」 渋谷ハチ公前にいた同じ眼鏡の太った男が、彼女に近づき、会話を始めた。 「やはりこいつが犯人か」 何やら口論しているように見える。 腕をつかむ彼女を振りほどき、渋谷と同じように、男が両手を前に出して、何かを言いながら回した。 次の瞬間、全裸になった彼女が悲鳴を上げながらしゃがみ込む。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 ショッキングな映像に、皆は言葉を失った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |