《MUMEI》
7
「あの、大丈夫ですか?」明が聞いてみる。

「何がですか?」

「酷い目に遭って、凄いショックだと思うんですけど」

「あ、大丈夫です。すぐに助けてくれた人がいたから」

結菜はやや笑みを浮かべ、恩人のサラリーマンの話をした。

「念のために入院しますか?」

「どこも悪くないのに?」

「でも、精神的なショックがあとから来るかと心配です」

結菜は笑った。

「大丈夫ですよ。あたし、いつも銭湯に行って番台のおじさんに裸見られてますから」

茉優は目を丸くする。

「番台! ダメじゃないですか、着替えてるところ見るんですか?」

「見てません、見てません」結菜は慌てて両手を出して否定した。「何てゆうか、あたし、裸を見られることはへっちゃらんなんです」

「嘘」

「恥ずかしいけど、恥ずかしいのも快感っていうか」結菜は白い歯を見せる。「だから心配しないでください。全裸にされたからってショックは受けてませんから」

そういうことか。

でも、この彼女が特別だと思うべきだと、明と茉優は思った。今も入院中の二人が普通なのだ。

「家まで送って行きます」

「ありがとうございます」

「必ず犯人を捕まえますから」

「お願いします。全裸はダメですよ。普通の女の子だったらアウトでしょう」

明るく喋る結菜を頼もしいと思いながら、明と茉優は、彼女をアパートまで送っていった。



懲りない結菜は、その夜も銭湯へ行く。

「お、きょうは遅かったね。来ないかと思ったよ」

「嘘」結菜は満面笑顔。「あたしを待っててくれてたんですか?」

「あ、いや」

緒方鉄博は焦った。待っているというのはおかしい気がした。

結菜は黄色いタンクトップに白のショートパンツ。夏とはいえ、もろ薄着で目のやり場に困る。

裸足だから見事な美脚が強調され、思わず見たくなるが、緒方は理性を総動員して男湯のほうへ目を向ける。



入浴を済ませた結菜が戻ってきた。

彼女はロッカーを開けると、さっさと下着をつけてしまう。

(あれ、きょうはバスタオル姿は見せてくれないのか)

緒方が残念がっていると、何と結菜は、セクシーな水色のブラジャーとショーツだけの格好で、番台の目の前まで来て、ドライヤーで髪を乾かす。

(おっと、これは・・・ダメでしょう)

目の前に下着姿の19歳の美少女が立っている。

見たい。でも見てはいけない。しかし見たい。いや、覗くわけではなく、本人が目の前に下着姿でいるのだから、見てもいいということではないのか。

緒方が自問自答していると、今度は結菜は牛乳を持ってきて、番台にお金を払う。

「毎度」緒方は彼女を見ながら言った。「いつも元気だね」

「え?」

小首をかしげるリスキーガールは、牛乳を飲みほすと、ファッション誌を手に取り、長いすにうつ伏せに寝て本を読む。

(おっと、これはもしかしなくても、完全に挑発ではないのか)

かわいいヒップだ。たまらなくセクシーな19歳。緒方の理性は万里の果てまで飛んでいった。

結菜は出血大サービス。今度は仰向けになって本を見る。

(うにょ・・・)

セクシーな美ボディに釘付けの緒方。結菜はドキドキしながら火遊びを楽しんでいた。

(あたしのこと、見てる見てる。ふふふ。ヤらしい)

そこへ柄の悪い女性客が二人入ってきた。

「いらっしゃい」

小銭を払い、ロッカーへ向かおうとしたが、結菜のことが目に入る。

金髪の女性客二人は、番台と下着姿で寝転がる結菜を交互に見ると、いきなり長いすにキック!

「キャッ」

びっくりして起き上がる結菜に、二人は凄んだ。

「テメー、何長いす独り占めにしてんだよ!」

「ごめんなさい」

慌てて本を置いて立ち上がろうとする結菜を二人は押さえつけた。

「テメー、番台から丸見えじゃんかよ」

「そんなに自分の裸見せたいのかよ露出狂」

「違います、そんなんじゃありません」

ムッとする結菜に、二人は絡む。

「そんなに裸見せたいなら下着も取れよ」と脱がしにかかった。

「ちょっと、やめてください!」

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