《MUMEI》

裕斗は頭を揺らしながら、泣く事を止める気配がない。




「何年も一緒にいたんだぞ…、俺達は…簡単な関係じゃねーんだぞ…、……」





「だか…ら…、ヒクッ、…、だから…、どう…しよ…、
でも…、あの人が、俺、好きで…好きで…、好きなんだよぉ…、
ゴメン……なお…、
ゴメン……」






俺が…立ち入る隙の無い…、裕斗の誰かに対する切ない想いが……




分かりたくねーのに…







俺の胸に…響いた。





全ての時間が今、






止まってしまった錯覚がする。

全ての音が…

消えた………。


俺はいてもたってもいられず立ち上がる。

フルフェイスを被り、原付にエンジンをかけて…、跨った。

「ゆう…、俺はお前とは…、別れねーよ…」

裕斗は弾かれた様に立ち上がった。




そして、何かを言おうとしていたが……

俺は裕斗を無視し、
その場から逃げる様に…






立ち去った。

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