《MUMEI》
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「バカなことじゃねえ。本当にやるぞ。さっさと用意しろ!」

ガチャンと電話を切ると、男は淫らな顔で女子行員たちを見た。電話のやりとりを聞いていた彼女たちは震えた。こんなに大勢の人たちが見ている前で全裸にされたら。想像するだけで背筋が凍る。

銀行の外に、塩刈千香もいた。彼女は、警視庁で、秘密裏に準備されたチームの一員だ。この部署は主に性犯罪撲滅を目的とした特殊班で、危険な囮捜査や、潜入捜査もやる。

しかし毎日仕事があるわけではないので、日頃は刑事課の仕事を手伝っていた。

「課長。あたしが行きます」

「危険だ」

「でも犯人は女って言ってるんでしょ。人質の女性が一人でも裸にされたら、警察の負けです。急がなければなりません」

千香の恐れを知らない凛々しい横顔を見て、刑事課長も心が動く。千香の噂は耳にしていた。格闘技の達人。度胸満点。かなり危険な潜入捜査を経験し、事件を解決してきた敏腕刑事だ。

「頼んでいいか」

「任せてください」

千香は銃を課長に預け、両手を上げて、銀行にゆっくり歩いていった。犯人の男は、千香のことを見ていた。

「ほう、いい女じゃねえか」

やや染めた髪は、肩に少し触れる程度の長さ。センスを感じる。グレーのスーツに身を包むスタイル抜群の女刑事。白いブラウスからも豊かな胸を感じる。引き締まった腹筋。すらっとした長い脚。

犯人は千香に見とれた。澄んだ瞳が愛らしい。彼女が銀行に入ってくると、銃を向けた。

「待って、撃たないで」

声もかわいい。男は危ない妄想を抱き、興奮した。

「おまえ、刑事か?」

「ええ」

「よし、こっち来い」

千香は、慎重にカウンターの近くまで行く。

「名前は何てんだ?」

「・・・塩刈」

「しおかり?」

「千香」

「チカか。かわいいな。まずは銃を出せ」

「銃なんか持ってないわ。丸腰よ」

「嘘をつけ。警察は信用できねえ。身体検査だ。全部脱げ」

「え?」

焦る千香に、男は危ない笑顔で銃を向ける。

「早くしろ。スッポンポンになってもらうぞ」

「・・・・・・」

千香は距離を詰める。女子行員たちは、いたたまれない表情で女性警察官を見ていた。嶋田はすでに臨戦態勢だ。いつでも犯人に飛びかかれるように身構えていた。

しかし、嶋田刃条は善良な市民ではない。この千香という美人刑事が、裸にされるところを見たい気もした。

「裸は勘弁してください」

「ダメだ。早く脱げ」

「刑事だって女です。恥ずかしいわ」

「おまえが脱がないならなあ」そう言うと、女子行員の腕を強くつかむ。

「きゃあああ!」

「こいつを真っ裸にするぞ!」

「わかった、やめて、脱ぐから、その人を放してください」

千香が言うと、男は笑いながら女子行員を放した。千香の魅力にやられて頭に血が上り、銀行強盗という本来の目的を半ば忘れている。

「へへへ、さっさと脱げ」

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