《MUMEI》 2「バカなことじゃねえ。本当にやるぞ。さっさと用意しろ!」 ガチャンと電話を切ると、男は淫らな顔で女子行員たちを見た。電話のやりとりを聞いていた彼女たちは震えた。こんなに大勢の人たちが見ている前で全裸にされたら。想像するだけで背筋が凍る。 銀行の外に、塩刈千香もいた。彼女は、警視庁で、秘密裏に準備されたチームの一員だ。この部署は主に性犯罪撲滅を目的とした特殊班で、危険な囮捜査や、潜入捜査もやる。 しかし毎日仕事があるわけではないので、日頃は刑事課の仕事を手伝っていた。 「課長。あたしが行きます」 「危険だ」 「でも犯人は女って言ってるんでしょ。人質の女性が一人でも裸にされたら、警察の負けです。急がなければなりません」 千香の恐れを知らない凛々しい横顔を見て、刑事課長も心が動く。千香の噂は耳にしていた。格闘技の達人。度胸満点。かなり危険な潜入捜査を経験し、事件を解決してきた敏腕刑事だ。 「頼んでいいか」 「任せてください」 千香は銃を課長に預け、両手を上げて、銀行にゆっくり歩いていった。犯人の男は、千香のことを見ていた。 「ほう、いい女じゃねえか」 やや染めた髪は、肩に少し触れる程度の長さ。センスを感じる。グレーのスーツに身を包むスタイル抜群の女刑事。白いブラウスからも豊かな胸を感じる。引き締まった腹筋。すらっとした長い脚。 犯人は千香に見とれた。澄んだ瞳が愛らしい。彼女が銀行に入ってくると、銃を向けた。 「待って、撃たないで」 声もかわいい。男は危ない妄想を抱き、興奮した。 「おまえ、刑事か?」 「ええ」 「よし、こっち来い」 千香は、慎重にカウンターの近くまで行く。 「名前は何てんだ?」 「・・・塩刈」 「しおかり?」 「千香」 「チカか。かわいいな。まずは銃を出せ」 「銃なんか持ってないわ。丸腰よ」 「嘘をつけ。警察は信用できねえ。身体検査だ。全部脱げ」 「え?」 焦る千香に、男は危ない笑顔で銃を向ける。 「早くしろ。スッポンポンになってもらうぞ」 「・・・・・・」 千香は距離を詰める。女子行員たちは、いたたまれない表情で女性警察官を見ていた。嶋田はすでに臨戦態勢だ。いつでも犯人に飛びかかれるように身構えていた。 しかし、嶋田刃条は善良な市民ではない。この千香という美人刑事が、裸にされるところを見たい気もした。 「裸は勘弁してください」 「ダメだ。早く脱げ」 「刑事だって女です。恥ずかしいわ」 「おまえが脱がないならなあ」そう言うと、女子行員の腕を強くつかむ。 「きゃあああ!」 「こいつを真っ裸にするぞ!」 「わかった、やめて、脱ぐから、その人を放してください」 千香が言うと、男は笑いながら女子行員を放した。千香の魅力にやられて頭に血が上り、銀行強盗という本来の目的を半ば忘れている。 「へへへ、さっさと脱げ」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |