《MUMEI》
4
嶋田はさらに何やら弓矢に指示する。弓矢孝之は部屋を出ていった。千香がドアのほうを見ると、嶋田が聞いた。

「仕事は慣れたかね?」

「いえ、まだ覚えることがたくさんあって」

「そう」

弓矢が戻ってきた。なぜか屈強な男が三人入ってきた。

「ところで千香君」

「はい」

「私は君のことを知ってるよ」

「え?」千香は緊張の面持ちで聞いた。「どこかでお会いしましたか」

「最近会ったよ。でも君のほうは私のことを覚えてないだろう。会話したわけではないからね」

「あ、そうなんですか」

嶋田は無表情のまま、言った。

「あの時銀行に、私もいたんだよ」

「銀行?」

「君が犯人を電光石火の早業で組み伏した瞬間を、私も見ていた」

千香は一気に呼吸が乱れた。正体がバレてしまった。

「君のような美人さんの下着姿も見れて、あの日はラッキーだったね、ハハハ」

「・・・・・・」

臨戦態勢を取る千香に、屈強な男たちも身構える。

「潜入捜査か?」

「・・・・・・ええ、まあ」

「舐めてるのか?」弓矢が凄む。

「正体がバレたならしょうがないわ。嶋田さん。アニマルを使った強姦。そんなことを実行したことがあるの。それとも単なる妄想?」

弓矢が驚く。嶋田も思わず苦笑した。

「日本の警察は優秀と聞いたが、そんなことまで調べてしまうのか。凄いね。でも残念ながら実行したことはないよ」

「絶対にやめなさい。これは命令です。わかるでしょ。そんなことされたら、女性は一生を棒にふるわよ」

「何が命令だテメー!」

弓矢が怒鳴る。千香も睨み返す。

「千香。おまえを実験台第一号にしてやろうか」

「弓矢孝之。今の一言で逮捕できるのよ。でも武人の情けで許してあげるから、そんな下劣なことはやめなさい」

「舐めるんじゃねえぞ」

弓矢が千香の腕をつかむ。

「放しなさい」

「うるせえ」

「放しなさい」

「黙れテメー。誰にもの言ってんだこのヤロー」

千香が怖い目で睨んだ。

「これが最後よ。放しなさい」

それでも弓矢が腕を放さないと、千香は弓矢の顔面に右エルボー!

「があああ!」

それを見て、屈強な用心棒が千香に襲いかかる。千香はバックキック、サイドキックを続けざまに放ち、男を吹っ飛ばす。

「テメー!」

ほかの子分たちも千香に向かう。千香は顔面に右ジャブから左ストレート。後ろから来る男のボディにバックキック。腕をつかんで捻り、胸に膝蹴り。

あっという間に何人もの男が倒れていく。想像以上の強さに嶋田は焦った。もっと大人数を呼ぶべきだったか。

千香が嶋田のほうに歩み寄るのを見て、寝ていた男が千香の両足首をつかむ。千香は振り払おうとしたが、一斉に襲いかかられ、押し倒されてしまった。

(しまった!)

こうなると女性の力では苦しい。男たちは強引に千香を仰向けに押さえ込み、両手両足の自由を奪った。

「放せ!」

弓矢が危ない笑顔で千香を見下ろす。

「テメー、よくも痛いことしてくれたな」

「いいから放しなさい」

「誰が放すかよ」

弓矢は無防備な千香のおなかに、腹パンチ連打だ。

「うぐ、うぐ、うぐ・・・」

本気で殴られ、千香は苦悶の表情。

(嘘、どうしよう、死んじゃう・・・)

「うぐ、うぐ、うぐ、うぐ、うぐ・・・・・・」

千香はたまらず気を失ってしまった。

「はあ、はあ、はあ・・・刑事がナンボのもんだよ」

興奮する弓矢孝之をどかすと、嶋田は、完全に気を失っている千香の頬に手をやった。

「本当にいい女だな。たっぷりかわいがってあげようじゃないか、ふふふ」

千香、絶体絶命の大ピンチだ。弓矢も、生意気だが美人で魅力的な千香を拷問できると思い、心底興奮し、胸の高鳴りを抑えることができない。

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