《MUMEI》
6
意気消沈している千香の耳を、弓矢が触ろうとする。千香は首を振って嫌がる。弓矢はしつこく耳を触る。千香は激しく首を振る。

「千香、耳弱いのか」

「・・・・・・」

無視する千香に怒った弓矢は、千香の顎を指でつかみ、グイッと上げる。

「あっ」

「千香、降参したから許してあげたのに、そういう生意気な態度取るなら、またお湯でいじめちゃうぞ」

「・・・・・・」

千香は弓矢の手に噛みついた。

「バカ、イテテテテテ!」

弓矢は手をさすると、容赦なくスイッチオン。45度のウォシュレットが千香のお尻を再び直撃する。

「あ・・・あああ・・・アイッチチチチチ・・・アチチチッチチ・・・わかったやめて、わかったから」

「人の手噛みついてわかったじゃねえよ」

「ごめんなさい許して」

「かわいい!」

弓矢は止めた。

「はあ、はあ、はあ・・・」

「千香、本当にわかったのか」

「・・・わかったわ」

「わかったわ?」

「わかりました」千香は仕方なく言い直した。

嶋田が前に一歩出る。

「千香君。わかったかね。生身の体では、拷問に耐えるのは無理だ。ある意味、こんな序の口の拷問で君はギブアップしてしまった。女の子が全裸で無抵抗にされたら、しおらしくしたほうがいいよ。だって、生意気な態度なんか取ったら、その出鼻をくじくまで意地悪されるに決まっているんだから」

千香は俯いていた。悔しくて悔しくて仕方がない。

「では、本題に入ろう。君は優秀だ。どうだ。私の部下にならないか」

「え?」千香は顔を上げて嶋田を見た。

「警察は辞めなくていい。警察の情報を逐一私に流してくれればいい。いわゆるスパイになるということだ」

そんなこと無理に決まっている。しかし断ればまたスイッチを押されてしまう。千香は胸がドキドキしてきた。

「NOなら、その体に聞くことになるよ」

「ちょっと待ってください。考える時間をください」

「仕方ない。じゃあ、次の拷問部屋に案内しよう」

「え?」

背後からハンカチを持った男が近づく。千香はもがいた。

「待って、刃向かわないから・・・んんんんん!」

無抵抗の状態でハンカチを口と鼻に当てられてはどうにもならない。息を止めて頑張ったが、吸ってしまった。千香はガクッとうな垂れた。気を失っている。

「運べ」

「はい」

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