《MUMEI》
バター犬 1
打ち合わせは嶋田刃条の部屋で行う。しかし、用心棒として男が五人もいる。

「千香君」

「はい」

「いろいろ酷い目に遭わされて体が痛いだろう。マッサージで全身をほぐしてあげよう」

「いえ、大丈夫です」

「遠慮することはない。そこのベッドに寝なさい」

どうせ嫌らしいマッサージをされるのだろう。断ればイルカとか犬と言って脅す気だ。千香は口を真一文字にすると、ベッドにうつ伏せに寝た。

純白のビキニがたまらなくセクシーだ。男は巨大な電動マッサージャーのスイッチを入れる。ウイーンという鈍い音が部屋に響き渡る。千香は緊張した。

「千香君」

「はい」

「君は格闘技を修得しているんだね」

「はい」

マッサージャーは千香の肩、背中、腰、そして両腕両脚をマッサージする。意外にもまじめなマッサージをしてくれるということなのか。

「空手か?」

「空手と合気道とキックボクシングです」

「ほう」嶋田は笑った。「女リーサルウエポンだな。敵に回したら怖いが、仲間にするなら頼もしい」

「仰向けになって」マッサージする男が言った。

「はい」

千香は素直に仰向けになった。男は彼女の両腕を枕もとに上げ、両腕をクロスさせる。この無防備な体勢は結構怖い。巨大なマッサージャーは千香のおなかをマッサージする。

「ん・・・」

「千香君は、パソコンは得意か?」

「どういうのが得意なのかはわかりませんけど」

「ハッキングはできるか?」

千香は答えようか迷ったが、囚われの身だ。とぼけた答えは禁物だ。

「はい。完璧ではありませんけど・・・あん!」

「あ、ゴメン、手が滑った」

いきなり股にマッサージャーを直撃されて、千香は変な声を出してしまった。男を睨もうと思ったが、どうせわざとだ。彼女は我慢した。

「私は警察に捕まるわけにはいかない。もしも警察が私を狙っているとしたら、いち早く私にその情報を知らせるのだ。できるね?」

「でも、あたしは上層部でもありませんし」

「だからハッキングして情報を盗み出すのだ」

「警察のハッカー対策は進んでいますし、突破するにはなかなか困難な壁です・・・あああん!」

「ゴメンゴメン」

明らかにわざと千香の股にマッサージャーを当ててくる。千香はムッとした。

「嶋田さん」

「何だ?」

「マッサージはもういいです」

「遠慮するな」

「いえ、この人、わざとあたしの股に当てるんで、そういう意地悪されるならもういいです」

すると、嶋田が怖い顔をして男を睨んだ。

「君は、私の特別な部下になった彼女に、そういうセクハラをするのか」

「違います」

「どうやらワニの餌になりたいらしいな」

ワニと聞いて千香が慌てた。

「嶋田さん、そんなに怒らなくても」

「ハハハ。千香君。君は優しいな」

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