《MUMEI》 6「言うねえ。では行くよん」コングが突進してきた。「カーン! さあ、今ゴングが鳴りました!」 コングがボクサーのようなフットワークで飛んで来る。千香は焦った。さっきと違い、まるで隙がない。コングが猛然と顔面めがけて左右のジャブ。千香は必死に応戦するが、パワーが違い過ぎる。千香のガードの上からでも当たると腕が下がる。 「くっ!」 しまった、あの隙だらけのガードはフェイントだった。今さら気づいても遅い。だが闘って勝つ以外に生きる道はない。負けたら残酷刑しか待っていないのだ。 コングは左右のフック。千香も負けずに打ち返すが、彼女のレバーに強烈なボディーブロー! 「あああん!」 千香は思わず両手でおなかを押さえてダウンした。足に来ている。おなかがじんじんする。立ち上がれない。反射的に弱気な泣き顔でコングを見上げてしまう。 「あれれ、もしかして入っちゃった?」 「くううう・・・」 千香は歯を食いしばり、立ち上がる。コングは余裕の笑顔だ。 「降参?」 「誰が」 コングが来る。千香はカウンターの右ミドルキック! 当たっても効かない。コングは顔面に右ストレートの構えを見せての右ローキック! 「あああああ!」 千香はすっ倒れた。この巨体でこのクレバー。千香の勝ち目は薄いか。弓矢は安心してほくそ笑む。 「ぐひひのひ」 コングは倒れた千香の足を引っ張って部屋の中央にひきずると、右脚に立ったままのアキレス腱固め! 「あああああ! 痛い、イタタタタタタタ!」 泣き顔でもがく千香にコングは燃えた。技を解くと、すぐに左脚を取ってアキレス腱固め! 「あああああ! あああああ!」 歯を食いしばって耐える千香の困り果てる表情に、コングは嬉しそうだ。なぜだかすぐに技を解いた。 「はあ、はあ、はあ・・・」 汗びっしょりの千香に、コングが聞く。 「降参?」 「黙れ」 「黙れ? そういう生意気なこと言うとねえ、お尻を責めるよん」 「貴様・・・」 こんな男には絶対に負けたくない。千香は弱気な心を打ち払い、闘争心を総動員して気合を入れた。 前へ |次へ |
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