《MUMEI》
9
コングは目を丸くして、わざとらしく驚きの表情で千香を見る。

「何いきなり顔面にエルボー決めてんの。降参したから技を解いてあげたんだよ」

千香は立ち上がると、コングを睨んだ。

「負けたら裸にされるなんて、そんな賭けはした覚えがない」

「ヒロインが敗北したら敵に嬲られるのは常識でしょう」

「そもそもあたしは降参なんて口にしてない」

「あ、そういうこと言っちゃう」コングはなぜか嬉しそうだ。「そんなこと言ったら今度こそ本当に降参なしの非情なデスマッチルールになっちゃうよ。いいのう・・・だあああああ!」

不用意に顔を近づけたコングの顔面に右ストレート。千香は自ら逃げ道を塞いだ。

「鼻の真ん中殴っちゃいけないって小学校で習わなかった?」

「うるさい黙れ」

千香は覚悟を決めて臨戦態勢だ。コングは怪しい笑顔で彼女を脅す。

「ぐふふのふ。千香姫。この状況でまたキャメルクラッチが決まったらどうするつもり?」

千香は緊張した。敵に降参するのも悔しいが、降参しているのに許してくれなくて、とことんいたぶられてしまうのは耐え難い屈辱だ。

(絶対に負けない)

千香は自分に言い聞かせた。負ければ、コングに嬲られるし、ドSの弓矢は今度こそ犬にレイプさせるだろう。だから死んでも負けられない。

両者向かい合う。千香は両拳を構えながら距離を詰める。慎重にならざるを得ない。コングは余裕の笑顔だ。

千香が先に動いた。フットワークで飛び込み、フェイントのボディーブローから顎にアッパーカット! 入ったか。コングがふらつく。千香はチャンスと突進・・・そこをまさかのカウンターのドロップキック!

「きゃあああああ!」

千香は壁まで吹っ飛び、背中から激突して崩れ落ちた。185キロが飛ぶとは予想していなかった。ダウンする千香を無理やり起こすと、コングはバックを取る。千香は粘るが両脚が浮く。

「あああああ・・・」

思わず弱気な声を出す千香。しかしコングは容赦しない。バックドロップ!

「あん!」

後頭部を打ち、千香は両手で頭を押さえて苦悶の表情。両目を閉じ、歯を食いしばり、仰向けに倒れたまま起き上がれない。

「チャーンス!」

コングは上に乗ると、千香の両腕をつかみ、強引に腕を頭上でクロスさせ、片手で床に押さえつける。

「あああああ、あああああ!」

千香は激しくもがいた。コングは満面笑顔で迫る。

「ぎひひひ。千香姫。両手が塞がっては、あと一手で詰みじゃない? だって僕は右手があいているよん」

万事休すか。千香は全身に汗をびっしょりかき、赤面しながら身じろぎする。

「顔面パンチ連打されたらどうするつもり?」と顔にパンチを当てるまねをする。

千香は緊張の面持ち。謝ってしまおうかという弱気な心が出てしまう。それは顔にも出て、コングを興奮させる。

「顔は女の命だから、美ボディにボカボカ行っていい?」とおなかを殴るまねをする。

彼女は腹筋に力を入れて身構えた。

「それとも、脱ぐ? にひひひ」

卑猥なことを言われ、激怒した千香は、コングの背中に思いきり膝蹴り!

「痛い! 痛いことするねえ。もう絶対に許さないよん。2秒と耐えられない技でいじめてあげるん」

何が来るのか。千香は不安な顔色でコングを見ていた。コングは右手を高々と上げながら叫んだ。

「ストマック・クロー!」

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