《MUMEI》
11
「さあ、起きろ千香」

弓矢の声だ。千香は目を覚ました。

「あっ!」

すでに水着は剥ぎ取られていた。全裸でキングサイズのベッドの上に寝かされ、大の字に拘束されている。言うまでもなく大股開きだ。

(・・・・・・無念)

ここで哀願したところで、弓矢が許さないのはわかりきっている。千香は黙った。

「チーカ。立場が逆転しちまったなあ。どうするつもりだ?」

弓矢は勝ち誇った笑顔で千香のおなかや胸を触りまくり、股を弄る。

「ん・・・」

千香は顔をしかめる。コングは一歩下がった位置で千香を見ている。

「千香。何か言い遺すことはないか?」

「え?」

「俺が本当にやりたいのはハードリョナなんだ」

そう言うと、弓矢孝之は何と床にあった丸鋸を両手で持って、千香に見せた。

「ちょっと待って、何をする気?」

慌てふためく裸の千香がそそる。弓矢は彼女のリアクションに満足の笑みを浮かべると、スイッチを入れて動かして見せた。鈍い音ともに鋸が高速回転する。

千香は呼吸を乱しながら聞いた。

「あたしを、殺すの?」

「殺すよ。そう言ったじゃん。今さら謝っても遅いぞ千香。俺は甘くないからな。あの時に謝っておけば、許してあげたのに」

千香は、無駄だとわかっていても手足に力を入れる。ダメだ。紐ならまだしも、手枷足枷で拘束されたら自力では絶対に外せない。

「コング」弓矢が言う。

「ブラジャー、間違えた、ラジャー」

コングは机に木材を置く。弓矢は机からはみ出している木材を丸鋸で切って見せた。それを見ていた千香は顔面蒼白だ。

「千香。これは本物だぞ。嶋田さんは反対したんだ。殺しちゃいけないって。でも俺はハードリョナマニアなんだよ。一番興奮するのは、美しきヒロインの断末魔の叫びなんだよ」

弓矢が電気鋸を持って歩み寄る。千香は早口に言った。

「待って。ハードリョナって何?」

「ハハハ。時間稼ぎだろうが、少しくらいは付き合ってあげよう。おまえはどっちみち逃げられない。美しきヒロインが醜いモンスターに襲われたら、無惨にも食いちぎられてしまうんだ。ギャーって泣き叫んで。凄くかわいそうだ、ハハハ」

弓矢の目が危ない。千香は胸のドキドキが激し過ぎて喋るのもやっとだ。

「何、それはゲームとか、動画?」

「そうだ。女をボコボコにするが、殺すまではしないのがソフトリョナだ。リョナといえば、たいがいはソフトリョナのことだ。しかし俺は違う。たとえば磔にした女を本当に槍で刺しちゃうのがハードリョナだ。だって美しきヒロインの断末魔の叫びが聞きたいし、その時の表情が見たいじゃん」

脅しているだけなのだろうか。それとも本気なのか。女が怯える表情を楽しむだけか。万が一、完全にイカれた男だとしたら危ない。

千香が考えていると、弓矢は鋸を回転させて近づいてきた。

「待って、待ってください」

「待たないよ。さあ、どこを切ってほしい。腕か?」

「やめて!」

「それとも脚か?」

「お願いやめて!」

哀願する千香がかわいい。しかし弓矢は心身ともにエキサイトし、頭に血が上っていた。

「やっぱり女の子は、ココしかないよな」

電気鋸が大きく開いている千香の両脚の中に迫る。

「待ってください、待ってください!」

ついに彼女の裸の股に、丸鋸が向けられ、至近距離まで来る。千香は失禁しそうな恐怖に顔が歪んだ。ここは意地を張っていられない。誇りを選んでも殺されたら意味がない。

「やめて、孝之さん、命までは取らないで、お願い」

「今さら名前なんか言ったってダメだよ」

「許して、あああ、待って、いやああああああああああ!」

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