《MUMEI》
閃光の保健室
 ユウゴの体は後ろに吹き飛ばされた。
体の激痛と共に、一瞬息が止まり、目の前が真っ白になる。

「……ゴ!ユウゴ!」
名を呼ばれ、目を開けるとユキナが必死の形相でユウゴの肩を揺さぶっていた。
「いてぇ!痛いって!おい!」
「あ、生きてた。動ける?」
「なんとか…」
ユウゴは体に力を入れて起き上がった。
腹の辺りがひどく痛むが、血は出ていないようだ。
「あ、これのおかげか」
起き上がりながら、ユウゴは防弾チョッキを撫でた。
そのすぐ横で弾丸が跳ねる。
「おわ!危ね!」
 いつの間にか前方から五、六人の警備隊がこちらを狙っていた。
「は、走れ!」
慌てて二人は走り出す。

 階段を駆け降りながら、ユキナは思い出したように「こっち」とユウゴを誘導し始めた。
「何があるんだ?」
「保健室!」
ユキナは怒鳴るように答えると、勢いよく残りの階段を飛び降りた。


 保健室は一階にあった。
ユキナは急いで部屋へ入ると床に並べてあった薬品の瓶を次々と割っていく。
「なにやってんだよ?」
「いいから、さっさと窓から出るよ」
 入口近くの棚の上に、今にも落ちそうな角度で瓶を一つ置くと、彼女は窓から外へ脱出した。
部屋に怪しい煙が立ち込め始めたことに気付き、ユウゴも慌てて窓から外へ飛び出る。
ユキナはユウゴが出たことを確認して、窓をピシャリと閉めた。
その直後、保健室へ警備隊たちがなだれ込んで来た。

「なんだ!この煙……っがぁ!」
 一人の叫び声に同調するように、複数の苦しそうなうめき声が続く。
そして少しの間を置き、誰かが棚にぶつかったのだろう、瓶が割れる音が響き、保健室に閃光が走った。

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