《MUMEI》

黙って…
頷いてくれた…。





俺は…
本当は知っていた。


今まで裕斗は…俺の事を…

ずっと親友としか


見てきてなかった…

――ずっと無理をして
恋人を演じてくれて
いた事を…。






それでもいつか俺に惚れてくれる様、俺から離れられない様…






心も躰も縛ってきた。





学生時代、裕斗に誰も近付かない様、俺は必死に独占してきた。



ダチなんか作られるなんて耐えられなかったから、





『お前は人付き合いが下手なんだから、無理しないで俺の傍にいろ』




俺は何度もこの台詞を吐いて、裕斗の心を押さえつけてきた…。





人の良い振りして、心配してる振りして…




束縛しつづけた。


モデルなんかにスカウトされた時、やっぱりこんな仕事無理だったってなるだろうって鷹をくくって…、

俺に泣きついて欲しくて…

賛成するふりをした。

案の定、出だしからつまずいて悩んでたけど、まさか…





『ダチが出来たんだ、ソイツが始めから上手く出来ないのは当たり前なんだから…頑張れって言ってくれた。
今まで俺、何一つ頑張ってやり遂げた事がないから…だから、
この世界で頑張ってみる』





――そんときの裕斗…今まで視たことも無い位、輝いていた…。








前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫