《MUMEI》
黙って…
頷いてくれた…。
俺は…
本当は知っていた。
今まで裕斗は…俺の事を…
ずっと親友としか
見てきてなかった…
――ずっと無理をして
恋人を演じてくれて
いた事を…。
それでもいつか俺に惚れてくれる様、俺から離れられない様…
心も躰も縛ってきた。
学生時代、裕斗に誰も近付かない様、俺は必死に独占してきた。
ダチなんか作られるなんて耐えられなかったから、
『お前は人付き合いが下手なんだから、無理しないで俺の傍にいろ』
俺は何度もこの台詞を吐いて、裕斗の心を押さえつけてきた…。
人の良い振りして、心配してる振りして…
束縛しつづけた。
モデルなんかにスカウトされた時、やっぱりこんな仕事無理だったってなるだろうって鷹をくくって…、
俺に泣きついて欲しくて…
賛成するふりをした。
案の定、出だしからつまずいて悩んでたけど、まさか…
『ダチが出来たんだ、ソイツが始めから上手く出来ないのは当たり前なんだから…頑張れって言ってくれた。
今まで俺、何一つ頑張ってやり遂げた事がないから…だから、
この世界で頑張ってみる』
――そんときの裕斗…今まで視たことも無い位、輝いていた…。
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