《MUMEI》 ハーマイオニーさんと魔法車内販売の菓子やドリンクをしばらく楽しんでいると、コンパートメントをノックする音が聞こえた。 丸顔の少年が入ってくる。 「ごめんね。僕のヒキガエルを見なかった?」 「「全く見てないよ」」 面倒そうに答えるとっきーと嵐山さん。 ちょっと少年がかわいそうなので蛙チョコをあげたら喜ばれた。なぜだ。 その数分後、またコンパートメントの戸が開いた。 さっきの男の子が、ふさふさした栗色の髪を持つ女の子を引き連れてきたのだ。 ちょうどオレが練習した魔法をハリーのふくろうの羽で試そうとしていたタイミングだったからか、その女の子は座り込んで見物することにしたらしい。 「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」 「うー……いいよ」 杖を構える。 しっかり、狙いが外れないように腕を固定する。 「ちょっと危ないから離れてて__“インセンディオ”」 羽が一瞬青白い炎に包まれる。 「“アグアメンティ”」 ばしゃっ。 燃え上がった羽に水をかける。 「すごい……それって高学年で習う魔法でしょ?もう使いこなせるのね!私はハーマイオニー・グレンジャー。あなたは?」 女の子の勢いに気押されて、一瞬固まってしまった。 「オレは佐鳥賢。こっち風に言うとケン・サトリかな。オレ達、日本から来たんだ」 「日本から!?ホグワーツってそんなところからも生徒を集めているのね!」 ハーマイオニーは物珍しそうに本の山を見つめている。 「……気になるの、いくつか借りてってくれてもいいよ?」 「いいの!?」 言いながら数冊の本を山から抜き出して、ハーマイオニーは笑った。 「ありがと、ケン!私、あなたとはいい友達になれそうな気がするわ!あ、それじゃ……そろそろ行くわね。早くネビルのヒキガエルを見つけなくちゃ。一緒の寮に入れるといいわね」 「そうだね。……ま、またねっ」 ハーマイオニーの背中を見送る。 前に向き直ると、ハリーや嵐山さんを始めとした全員が唖然としていた。 ……誰か助けて。 前へ |次へ |
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