《MUMEI》
第九話
〔マスター、朝ですよ〕
〈うーん、うーん〉
〔焔さんが、部屋の前で突っ立ている〕
〈はっ!何だよ、驚かすなよ〉
〔本当にいるんですが〕
〈まさかね〉

ガチャッ。

「やぁ、おは」

バタン。

〈ん〜夢だな〉
〔現実を見てください〕

『おーい、どうしたんだい、ドアを開けてくれよ』

焔さんはドアをバンバン叩く。

『開けないとドアを蹴破るけどいい?』

「セバス」
「はい、何でしょう」
「外にいるやつを俺の部屋に近づけさせないでくれ」
「はっ!」

セバスは残像を残して消えた。

『な、なんだね。君は!』
『これ以上、部屋には近づかないで下さい』
『なんでだい?』
『マコト様が迷惑がっています』
『どうして、そんな嘘をつくんだっ、ちょっ、マコト、マコトくぅ〜ん』

あんなやつだったけ?
俺は部屋の扉を開け、焔の前に現れる。

「はぁ」
「マコトクン!」

焔さんは飛びついてきた。俺は焔の鳩尾に拳をいれ、気絶させようとする。すると、ふにゃんっ、という擬音が聞こえてきそうな感触が拳に。俺の拳は綺麗に鳩尾にはいり、焔を気絶させた。
俺は驚愕している。何故なら、拳に伝わったのはどう感じても女性にしかついてない、あの膨らみだったのだから。
俺は呆然とするが、急いで、焔を起こす。

「だ、大丈夫か?焔!」

焔には服の上からでも分かる二つの膨らみが胸にある。
何故だ?風呂の時は無かったのに。
ステータスプレートだって性別は男だったのに。
さりげなく、胸を触る。周りにはセバスがいるにも関わらず。ていうか、セバスは気絶させられていた。
ふにゃん。ふにゃん。

「あぅ」
〔変態ですね〕
〈うるさい!しょうがないだろ。あの焔がまさかの女だったんだぞ〉
〔それ、触る理由になりますか?〕
〈うるさい!〉

ふにゃん。ふにゃん

「あぅ」
「だ、大丈夫か、焔!」
「ん〜?マコトぉ」

か、かわいい。な、何故だ?
女と意識したら焔が可愛くみえる

「焔、お前、女だったんだな・・・・」
「え・・・・・・」

焔は自分の胸を見る。

「見ちゃ、らめぇええ」
「やめろ」
「らめぇええ」
「ちっ、コイン魔術、『遮音バリア』コイン」

マコトは焔が叫んだことで、自分達の周りに野次馬などが来たら困るので、コイン魔術:遮音バリアコインをつくり、半径二メートルの遮音バリアを展開させる。
これのおかげでバリア内での音は外には聞こえないようになった。
まずは現状の報告だ。報告といっても焔は実は女だったとしか知らんのだが

「焔」
「うわーん」
「焔!」
「うっ、ぐずっ」
「落ち着け」

焔を取り敢えず、落ち着かせる俺氏。焔は泣いている。だが、すぐに泣き止んだ

「確認で聞くが、お前は女何だよな?」
「うん、ぐずっ」
「何で今まで、隠してた。つか、お前、風呂の時は胸、無かっただろ」
「幻。ステータスプレートは偽装で変えた。今まで、隠してたのは男として生きたかったから」
「特別な事情でも?」
「私欲」
「つまり、男装をして今まで、生活をしてたわけだ」
「うんぅ」
「はぁ、バレたら困るか?」
「うん」
「じゃあ、二人だけの秘密だな」
「二人だけの秘密?」
「ああ。バレたら困るんだろ?」
「うん」
「じゃあ、決まりだな」
「あ、ありがとう」
「気にすんな。ま、しかし、今の焔の方がかわいいけどな」
「えっ・・・・」
「どうした?」
「今のは、本当に?」
「う・・・今はそんなこと良いだろ、別に」
「かわいい?」
「いや、だから」
「可愛くない?」
「うっ・・・か、可愛いよ」
「ふふっ、ありがと」

あー、俺は何を言ってるんだか

〔全く、素直じゃないですね〕
〈あ?〉
〔ウフフ〕
〈はぁ、面倒くせぇ〉

俺は焔に手を差し出す

「早く朝食を食べに行くぞ」
「うん」

焔は俺の手を掴み、立ち上がる。

「あ、セバス、大丈夫?」
「マコト様、私は大丈夫です。して、一体、何があったので」
「いや、何にも。ただ、セバス、ありがとう」
「いえいえ、これが私の役目です。また、何かあればお呼びください」

セバスは俺にそう言って去っていった。

「さて、焔。朝食を食べに行こうか」
「うん」

俺と焔は朝食を仲良く食べたのだった

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