《MUMEI》
第十八話
「萩原さんは・・・」

「生きてる!」

愛美が、俺の病室の扉をバァンと、開け、入ってきた

「まったく、マコチンは」
「愛美」
「どしたの、マコト?」
「凛は、やっぱり」
「うん、記憶喪失。医者に聞いたら今までの記憶は戻らないらしいよ」
「嘘だろ?」
「嘘ではないな」

俺は絶望した。記憶喪失とか、そりゃ、ないぜ

「何故、記憶喪失に?」
「変態によってかな」
「変態?」
「そ。今はもう死んでるけど」
「変態って、悪魔?」
「クラスの山田ってやつ」
「山田」

山田将生、野球部所属で、凛のストーカーだった男だ。

愛美の説明によると、山田は魔族の悪魔と契約をしたそうだ。契約内容は城の襲撃と凛を記憶喪失にさせること。そして、性行為をすること。
山田は記憶喪失の凛とヤったことで、満足し、命を悪魔に渡したという。

頭が熱くなった。血が上った感じだ。怒りが全身を駆け巡る。

「マコト、だいじょ?」
「うるさい!」
「!?」

桜井に怒鳴ってしまった。
病室の扉を開け、入ってきたのは

「木城君、大丈夫?」

伊神だった。しかし伊神の声が全く、聞こえない。今すぐに山田を殺しにいきたい。殺す殺す殺す殺す殺す。殺すで頭がいっぱいになった。あ、そういえば、山田はもう死んでいるんだっけ。くっそ。

「なあ、愛美。山田の死体は?」
「悪魔に命ごと食べられていたよ」

怒りが止まらない。この怒りを死体にでもぶつけようと思ったのに。死体もないなんて。いったいどうすれば、いいんだよ、なぁ、山田?

「『フィーリング』」

伊神が魔法を俺にかけたことによって怒りがとけ、冷静になった。

「大丈夫?、マコト君」
「ああ。ありがとう、伊神さん」

怒りで我を忘れそうになっていた、俺は伊神のおかげで冷静になれたので、感謝する。

「桜井も、すまない」
「ううん。大丈夫」

さっきの俺は桜井が心配して声を掛けてくれたにも関わらず、逆に怒鳴ってしまい傷つけてしまったため、謝る。土下座する勢いで。

「ま、とりあえず、マコチン。この後の事を、話し合おう?」
「ああ」

すると、扉がまた開いた。

「よぉ?」
「何かあったみたいだね」

石井と朝木だった。
先程の事を説明すると、

「とりあえず、クッキーでも食べて、一旦落ち着こう」

という事になった。
ここで、驚いた事が二つ。
まず一つ目は、今食べている高級のお菓子店に並びそうなクッキーは朝木が作ったものだという。朝木の両親は有名な菓子店で働いているそうで、朝木はお菓子を作ることが好きなんだとか。皆、次々にうまいっていいながら、夢中になっていた。実際俺も、何枚も行けるんじゃないかというぐらい美味しいクッキーを夢中になって食べていた

二つ目は石井が淹れてくれた紅茶が美味しかったのだ。セバスチャン達に遅れをとらないレベルである。石井の祖父さんは有名な政治家のSPをやっているそうで、石井は、何故か紅茶の美味しい淹れ方を知っている、祖父に一から教えてもらったらしい。石井の話によると、祖父の紅茶はこれよりも、美味いらしい。驚きしかない。見た目、脳筋の石井が紅茶を淹れる様子は新鮮というか、シュールというか。とにかく、美味しかった。

一段落つき、甘いクッキーに美味い紅茶を贅沢に味わった俺達はある、とんでもない情報を桜井と朝木から聞くのだった

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