《MUMEI》

恋人はカフェオレの代金を机の上に置き、荷物をもって立ち上がった。
目は一つも笑っていない、あぁ俺の馬鹿。

「なぁ待てって、待ってください」

先ほどまで楽しんでいたS男が完全に下僕状態である。

出て行こうとする恋人の背中を追う、途中でレジにつかまる、釣りはいらないよってうわコレよりによって樋口一葉さんか。

お釣りをもらって外に出たころには、恋人の姿はもう遠かった。

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