《MUMEI》

大またでがしがし歩く彼女を追いかける、肩を掴む、振り返る彼女の目には、

涙。

こいつこんなしおらしかったっけ?

「・・・・何泣いてんだよ」

「うる、さい」

痴話ゲンカしてんじゃねー。通りすがりのチンピラの声もどこか遠く聞こえた。

「らしくねぇだろ、ってかマジ俺が悪かった」

「や、だ。もぉ」

ぼろぼろ涙を零す恋人。そんな、俺が怒ったくらいで?

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