《MUMEI》

いつも騎乗で気丈な恋人も女である、ということを俺は完全に喪失していた。
急げ俺、急いで彼女の涙を制圧するのだ。

「ごめんって。お前がそんなに傷ついてるとは思わなかったわ」

「・・・・へ?」

肩越しに開かれる大きな瞳。

「え、違うの?」

「・・・・違うよ」

マヌケな時間が流れる。固まる俺と恋人。

「・・・・ホント、はこれ渡したくて」

「何ソレ」

「誕生日プレゼント」

「誰の」

「え。覚えてないの」

「・・・・今日何日だっけ」

「3月15日」

「え。じゃあ俺の、」

「・・・・うん」

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