《MUMEI》
第八話
「え?」

わざとらしく、とぼけた俺。

「ちょ、ちょっと、扉が開かない」

何回やっても開かない。マスターがやってみると、

「あれ?」

開かない。

「うーん、なんでだろうね。ま、いっか。あそこからなら」

と、マスターが春風さん達を連れて、エレベーターに向かった。

奥にエレベーターがあるのだろうか?何やら騒いでいる。

可哀想なので、扉だけ解除する。

戻ってくる、マスター達。パフェを食べ終わった俺は、椅子から腰をあげ、扉に向かう。

「それでは、帰りますね」
「え、扉は開かないよ?」
「え、あれ、マジだったんですか?」

とぼける。試す

カチャ。扉が開いた。

「ん?開きましたよ?」

マスター、春風さん達は、驚いている。

「春風さん、用事があったのではないですか?」
「え、あ、うん」

春風さんが外に出るが、扉が開かなかったことに首を傾げている。

「それじゃあ、またね」

春風さん達は現場に向かうのか、歩き出した。

付いていく。というよりも、向かう場所が同じ方向だと思う。だって、行く道が同じだから

「忍くん?なんで付いていくるの?」
「帰り道なんですが、方向が同じだからでは?」
「あ、そう」
「じゃあ、先に近道して戻りますね」
「え、あ、ちょ」

スイスイ〜と人混みを避けていく。先に帰ればいいだけじゃん。怪しまれないだろう。

さて、家に戻る途中、また昨日の夜中、今日の朝のように、薄い膜のような物の中に入ったのを感じた。

一応、細くてすぐに切れる、糸をそこら中に張り巡らせる。

『糸の結界』
細くて見えない、糸を張り巡らせることで、糸が千切れた時、張り巡らせた場所だけ何があったか分かる技。

家に戻ろうとすると門の前にEHがいた。

謎だ。よく分からない。状況が理解できない。

裏口から家に入る。

(まさか、スバルが化け物だって事がバレたか?)

急いで、家を捜索する。二階から足音がした。さらに、銃撃も聞こえる。

ヤバイ。スバルに何かがあったら。

すると、ドタドタと、階段から何かが落ちる音が聞こえる。

覚悟を決めた俺は、階段に向かう。階段には血塗れのスバルがいた。被弾したのだろう。あちこちから血が滴り落ちた。

(スバル!)
『忍』
『今、怪我を治してやる』

『癒しの糸』
癒しの糸によって、体を包み込まれた者は傷がふさがり、回復する。

すぐに、スバルの傷が癒えていく。

『洗浄の糸』
汚れをとることができる糸

『大丈夫か、スバル!』
『二度も命を救われるとは。体は大丈夫です』
『姉さん達は!』
『千尋達は買い物に出ています』
『分かった。で、襲撃者は?』
『おそらく、EHとかいう者達でしょう』
『クソっ!』

階段がギシギシとなる。戦闘員達が降りてくるようだ。そこで、糸で罠を作る事にした

『網罠の糸』
袋のような罠で地面や壁に設置し、物体が罠に掛かると自動的に網が放出され捕らえる

幾つか、設置し、俺はスバルの背に乗り、逃げる。

後ろからは悲鳴が聞こえた。

塀を飛び越え、道路に出た。

「忍くん?」

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