《MUMEI》 告白「どうだ、飯は旨かったか?」 「うん……とりまるってホント何でも出来るねー。今度料理教えて」 「バイト代出るなら考える」 「……月々2万円でどうだ」 「よかろう」 風呂上がり、満足げに頷き合う2人。 鞄からDVDディスクを取り出した京介が、やはり風呂上がりのメガネくんの方に向き直った。 「……修、これが次の相手の記録だ。一緒に見るか?」 「は、はい!」 男子勢より先に風呂に入っていた小南も、遊真にトリガーを向ける。 「遊真、もう一勝負するわよ!」 「ふむ、いいよ」 レイジさんと千佳ちゃんも訓練室に入ってしまって、宇佐美もそれに付き合うと言っていなくなってしまった。 結果的にリビングに残されたのは、おれと佐鳥と支部長だけ。 暗に、事実を佐鳥に伝えろと言われているような気がする。 「……さ、佐鳥」 「何ですか?」 若葉色の瞳がじっと見上げてくる。 純粋に “先輩” を慕うその瞳が、事実を告げたらどう変わってしまうのか。 おれにとっては、それがひどく怖い。 「……迅、そろそろ観念した方がいい」 支部長の静かな声。 佐鳥の表情が強ばる。 「迅、さん……?オレの兄さんのこと、知ってるんですか……?」 ああ、知ってるよ。 よく知ってる。 自分のことを、知らないわけがないだろ。 そう言いたいのをぐっと堪えて、佐鳥の頭に手を伸ばしてくしゃくしゃと髪をかき混ぜる。 ちなみに、佐鳥のサイドエフェクトが発動しないように、おれは薄い手袋をつけている。 「知ってること全部言ってやろうか?……19歳、鳶色の髪。目は空色で、身長は179cm。誕生日は4月9日で星座ははやぶさ座。趣味は暗躍、好きなものはぼんち揚。今1番望んでいることは、」 佐鳥の体を引き寄せて、しっかり抱きしめる。 腕の中で細めの体がびくっと跳ねて、佐鳥が動揺したのが分かった。 「……弟と、一緒にいること。」 うそ、でしょ。 佐鳥の声が震える。 「嘘な訳ないだろ……おれは、お前の兄なんだ」 若葉色の瞳から、大粒の涙が溢れるのが見えてしまった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |