《MUMEI》 迅さんの嵐山さん化が止まらない。背中に手が回された。 「…………さん……」 「ん……?」 佐鳥の小さくてくぐもった声が聞こえてくる。 「にい、さん……ずっと、会いたかった…………兄さん…………!!」 ぎゅう、とおれの服を握りしめて泣きながら笑う佐鳥。 「……佐鳥、おれもだよ。おれも、会いたかった」 本心を押し殺してそう言えば、佐鳥の涙に濡れた目が切なげにしぱしぱと瞬く。 「でも、一緒にいたくても、いられないんですよね……」 「……なら、玉狛に住むか?」 「え、いいんですか……?」 しまった。 半分冗談のつもりだったのに。 助けを求めて支部長の方を見ると、「佐鳥のご家族と忍田からはOK出たぜ」という返答。おい忍田さん、自分の部下玉狛に送るのかよ。 佐鳥は頬を桜色に染める。 「今日からは一緒ですね、迅さ……迅兄さん!」 「ッッ!?」 きゅーん!!って効果音がつきそうなぐらいにときめいた。 「迅兄さん」なんて、ずるい。なんで苗字に兄さんつけちゃうのさ。かわいい。 「……佐鳥、一応おれとお前は苗字が同じ【迅】なんだ。名前呼びでも良いんだぜ」 「え!?……じゃ、じゃあ…………」 悠一、兄さん? 小首をかしげてちょっと不安げな表情で見つめてくる姿には、仔猫や仔犬のようなあどけなさがあって。 「弟かわいい……!!」 「っひゃ!?」 思わずぎゅっと抱きしめ直してしまったのは、仕方ないことだろう? 「これからは、ボーダーの中を必死で探さなくても会えるぞ」 「はい!」 かわいいかわいいおれの弟。 お前は、おれの本心を知らずにそんなことばかりして…… ホント、罪なヤツだよな。 前へ |次へ |
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