《MUMEI》
絶望の予兆
「……賢」
「何ですか、悠一兄さん」
「これから宜しくな」
「はいっ」

にこにこと笑う賢は、おれを「兄さん」と呼べるのがよほど嬉しいらしい。

そんな賢が、爆弾発言をぶちかましてくれやがった。

「悠一兄さん、今日は一緒に寝ませんか?」
「ッッ!?え、なんで!?」
「なんで、って……お、オレがそうしたいだけ、ですけど……?」

若葉色の瞳が困惑の色を湛えた。

「だ、ダメですか……?」なんて若干ながら上目遣いで言われたらうっかり頷いちゃうよね!!不可抗力だよね!!

「ん、分かった。実力派エリートの腕枕なんてそうそう体験できるもんじゃねーぞ」
「腕枕確定ですか……」

そう話しながら部屋に戻る。

賢と一緒にベッドに寝転がって、賢には腕枕をしてやった。

「兄さんの腕、やっぱりちゃんと筋肉ついてるんですね……オレもつけないと」
「何言ってんだ。ライフル両手に一挺ずつ持ってツイン狙撃するやつが筋肉ついてないわけないだろ」

軽めのボディタッチならセーフだろうという若干の下心もあって、おれは賢の左腕を掴む。

「……やっぱ筋肉ついてるじゃねーか」
「え?自分じゃ全然そんな気しませんけど……」

うーむ、と唸る賢の頬を左手でつねる。柔らかい。

「ついてるもんはついてんのー。ほら、明日も仕事あるんだろ」
「……はい、おやふみなはい」
「ん、おやすみ」

……かわいい。
おやすみ、と声をかけたら、すぐに眠ってしまった。

その愛らしい寝顔がノイズに遮られる。

瞬間、 “嫌なもの” なんて言葉じゃ足りないぐらいにひどいものが見えた。

(……ちょっと、待てよっ)

今見えたあの未来。

(まさか__)

「__おれの、せいで?」

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