《MUMEI》
伊藤視点
「男の子…に…惚れた!?……秀幸が…?」
「…そうなんだよ、まさかだろ、俺も信じらんねーよ」
俺は俳優仲間であり、親友の佐伯陸と久し振りに飲んでいる。
俺と違って佐伯は二枚目で、ドラマも主役しかやらない。
俺はたまに主役も来るが…決して二枚目の役では…ない。
「そっかぁ、…はは、…で、どんな子?」
佐伯はシャンパンを俺に注いでくる。
「…今ドラマで共演してんだけどよ、坂井裕斗って…知ってっか?」
「は……さ、さか…、お前!!おい、
そいつは…!!」
「あ、知ってんの?
…あれー?
まさかお前好みで狙ってたのか〜?
駄目だぞ、あんないい男と付き合ってんだからよー……」
佐伯が珍しく動揺している。
酒が入ったって赤くならない顔が真っ赤にそまった。
「好みも何も…、
シェスターの…
息子だよ…、
坂井…裕斗は……」
「へ??何だって!!何だそれ!!聞いてねーぞ!!」
びっくりだ!俺が男の子に惚れた衝撃に次ぐ位びっくりだ!!
「何だそれって……、ああ、親父が誰か聞いてなかったのか、
何か…公表してないみたいだからな…」
佐伯はシャンパンをぐっと飲み干し、はあと溜め息をついた。
「マジかよ…、そっか……」
確かに…誰かに似ている気もしていたが…。
俺もシャンパンを一気にあおった。
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