《MUMEI》
『異常門』
「三輪、おあよー」
「おはよう……今日は遅刻しなかったんだな、仁礼」

俺の指摘に、仁礼は若干怒ったように反論する。

「はぁ!?アタシだって好きで遅刻してないし。あ、おはよ奏」

仁礼がぽんっと「奏」という女子の肩に手を置くと、その女子が振り向いた。

腰まである銀色の髪、紅い瞳、人を寄せつけないような目つき。
見た目に反して穏やかな性格の彼女は、俺の片想いの相手だ。

「おはよう仁礼、あとうるさい。ってか好きで遅刻する奴なんていないから」
「うっ……流石は奏。ツッコミが正確過ぎるぜー」
「褒め言葉として受け取っとく。おはよ、三輪」
「ああ、おはよう霧宮」

一言だけ挨拶を交わすと、霧宮はすぐに自分の席に行ってしまった。
霧宮と俺は席が離れているから、あまりその姿を見られないのが残念だ。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

(……舞姫とかすり減るほど読んだし、つまんないわー)

国語の授業を適当に聞き流しながら、校庭を眺める。
ちょうど米屋達のクラスが体育をしていた。

米屋を見つけて小さく手を振ると、向こうも気づいて手を振り返してくれた。

不意に、電気の走るような音がした。

__バチッ

空が昏くなる。
電気の走るような音がどんどん大きくなっていく。

__バチバチバチッ

「門だ!!避難しろ!!」

私が声を上げるのと黒い穴が空に開くのは、ほぼ同時だった。

「仁礼!!……は任務か!!」

とりあえず三輪に声をかける。

「三輪、行くぞ!!」
「ああ!!」
「「トリガー、起動!!」」

身体を機械的な色が包む。

『トリガー起動開始 起動者実体走査 戦闘体生成 実体を戦闘体に換装』

私の姿は、白いロングコートを纏ったそれに変わる。

『メイン武装展開 トリガー起動完了』

手にかかる弧月の重み。
その感触をしっかり確かめて、暗紫色の隊服を纏った三輪と一緒に校庭へ飛び出した。

「本部、こちら霧宮」
『こちら本部。どうしました?』

沢村さんの冷静な声。

「三門市立第一高等学校に異常門が発生した。これより迎撃する」
『了解です』

通信を切って、モールモッドを切り裂く。
そのまま背後のバムスターも切り倒そうと振り向いた瞬間、鋭い閃光がバムスターの頭部を貫いた。

『先輩方、今日は佐鳥にとっきーととりまるも非番ですよっ』

繋がれた通信から聞こえてくる明るい声。
その声の持ち主は、ボーダーの広報部隊である嵐山隊の狙撃手・佐鳥賢だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫