《MUMEI》
『A級隊員』
バムスターに鋭い刃が突き立てられ、そのまま胴体が2つに割られる。
ひらりと私の隣に降り立った黒髪の男子__烏丸京介は、私の頭を撫でてきた。

「霧宮先輩、大丈夫っすか」
「大丈夫。あと撫でるな。それより烏丸、わざわざ2つに割る必要あった?」
「……ないっす」
「それ、無駄な動きだからね」
「はい……」

頭に置かれた手を払いのけて指摘すると、烏丸はちょっとだけ反省したように敵に向き直った。

「三輪、モールモッドに鉛弾頼む」
「分かっている」

ガキン、という音と共に、モールモッドの動きが鈍る。
その隙に弱点を切り裂くと、トリオンの黒い煙が噴き出した。

『あと5体です!とっきー、右からバム来てる!とりまるはさっさと正面の2体片付けて!三輪先輩と霧宮先輩はモールモッド1体ずつお願いします!』

佐鳥の正確な指示。
それに従って敵を片付けると、屋上に避難していた生徒達から歓声が上がった。

『見せ物じゃないんですけどねー』
『まあ、ボーダーの印象アップってことでいいじゃん』

通信に乗って聞こえてくる嵐山隊の2人の会話。
三輪は忌々しげにバムスターを見下ろしている。

「……三輪、さっさと調べて戻るよ」
「ああ……」

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

放課後、三輪と2人で今日のことを報告しに本部へ向かっていると、自然と次の調理実習の話になった。

「次はクッキーだっけ。なんでわざわざそんな簡単なの作るんだろ」
「それこそ簡単だからじゃないのか」
「あー、そういう……三輪も、クッキー好きなんだっけ」
「……ああ」

ちら、と三輪を盗み見る。
普段クールな横顔が少し緩んでいて、綺麗。

(って、何を考えてるんだ私は)

三輪は、大規模侵攻で喪ったお姉さんとの思い出を思い出してしまったかもしれないのに。

「……霧宮」
「な、何」
「調理実習は、同じ班になれるといいな」
「……うん」

ドキドキする。

冷たい風が吹きつけるせいで、頬が熱を持っているのが嫌でも分かってしまう。

片想いの相手にこんなこと言われて、ドキドキしない方がおかしいのだけど。

「……霧宮、今日の門のことなんだが」
「あ、うん」
「ボーダーの誘引装置が効かないなんて、思わなかった……」

うつむいた三輪。
なんだかいたたまれなくなって、ちょっとした冗談を投げかける。

「小型トリオン兵のせいだったりして。三門市の地下にいっぱい潜んでるとか」
「気持ち悪いことを言うな」

三輪は虫がダメなタイプだったか……。
反省しよう。

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