《MUMEI》
『ボーダー上層部 (2)』
__あいつ、玉狛の……

__あー、何だっけ。銀……銀狼だ!

__あの人、すごく残酷らしいよ?

(……うるさい)

百歩譲って、玉狛の隊員が噂されるのは分かる。

でも、なんで「残酷」なんて言われなきゃいけないの?

イライラしていると、目の前には沢村さんにセクハラかましてニヤついてる実力派エリートが。

よし、飛び蹴りの刑に処そう。

「ぐふぅっ!?」

わー、いい吹っ飛びっぷり。

「沢村さん、ご無事ですか」
「ええ、ありがとう」
「おれは無事じゃなくていいのかよ……」
「お前はトリオン体だから別にいい。それと、会議室には少し後から向かいます」

そんな会話をしながら本部の中を進んでいく。
すると、三輪が向かいから歩いてきた。そして私の前で立ち止まり、いきなり土下座。

「霧宮……」
「……ん、何」

動揺を隠して訊くと、思わぬ返答。

「明日の現文の補習助けてくれさい……」
「い、いいけど」

いきなりどうしたの、と訊けば、現文ほど苦手なものは他に存在してないそうで。

やっと年頃の男子っぽく見えたっていうのは、内緒。

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

「……霧宮奏、本部司令のお召しにより参上いたしました」

……忍田さん__仕事中はそう呼べと言われている__のネクタイが少し曲がっている。

「……本部長、特に精神的な方でお疲れなのは分かります。ですがせめてネクタイを直すぐらいの心の余裕はあった方が良いかと」
「あ、ああ……そうだな」

忍田さんはさっとネクタイを直す。

開発室に付き合ってくれていた三輪が、城戸さんの後ろに立つ。

(さっきまで「助けてくれさい」なんて言ってたのになぁ……)

こういうところはさすがだと思う。

まあ、目の前に座っているこいつにも言えることではあるけども。

「……ご苦労。その顔から察するに、呼ばれた理由は分かっているようだな」
「ええ。昨日より相次いで発生している異常門の件でしょう?うちの高校では何も分かりませんでしたし、迅はもう分かってるみたいですよ」

迅に説明を押しつけて、会議室の壁に寄りかかる。
この壁、ほんと人をダメにする壁だ。皆寄りかかる訳だよ。

「……奏ぇ、もうちょいおれの負担減らしてくれてよくない?」
「うるさい女の敵」

短く返すと、迅は大きなため息をつく。

「お前ホントノブたすみたいな対応な」
「じゃあそっちは腐れ天パになるけど」
「……それストパ嵐山になるよな。金さんはおれ向きだと思うんだが」
「CV的な意味で?」
「そうそうCV中村悠い__CVって何だよつか誰だよ中村悠一」
「誰も知らない知られちゃいけない感じの人なんじゃないかな」
「それただのデ○ルマンな」

迅のツッコミで会話が終了した。
……そして、会議室もしんと静まり返ってしまった。

「あー、まぁー……あれです。異常門の原因探しはこの実力派エリートに任せてください。その代わりと言っちゃなんですけど__」

眼鏡をかけた男子中学生の肩にぽんと手を置く迅。相手が女子中学生だったらうっかり蹴ってたかも。

「__彼の処分は、おれに任せてもらえませんか?」

城戸さんの表情が険しくなった。

「…………彼が関わっているというのか?」
「はい」

迅は自信たっぷりに頷く。

「おれのサイドエフェクトがそう言ってます」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫