《MUMEI》
『調理実習』
金曜、三輪が休んだ。

「……三浦、なんで三輪が休んだか分かる?」
「え?あー……なんか、急に用事ができたらしいよ」
「そう……」

今日は調理実習なのに。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

「なんでよりによってアンタと一緒なのよー、ワタシは三輪くんの為の作るんだから、ジャマしないでよねー」
「知らない……私はいつものやり方で作るし……」

そういえば、こいつも三輪のこと好きなんだっけ。振り向いてほしいならまずその分厚い化粧やめればいいのに。

まあいいや。材料をさっさと手元に揃える。

(今日のレシピだと軽く72個ぐらいか……)

室温に戻したバターを120g、砂糖を100g、溶いたMサイズの卵を1個分、薄力粉を240g、バニラエッセンス少々。
私はさらにココアパウダーを大さじ2加える為に持ってきたけど。

まずは柔らかくなったバターと砂糖を白っぽくなるまで練り混ぜる。

(バターがいい感じに溶けてる。混ぜるの楽だな……)

三浦に驚かれた。手際良すぎ、らしい。
別に悪い気はしない。

次は、溶いた卵を少しずつ加えてよく混ぜる。そしてバニラエッセンスをひと振り。
絶対ひと振りだけ。バニラエッセンスは苦いのだ。

その次は、さっき作った液体を4つに分ける。
1~3つ目には薄力粉だけをふるい入れ、4つ目にはココアパウダーを薄力粉と合わせてふるい入れて、さっくりと混ぜる。
ちなみに、ここは意外と力仕事だ。粉っぽさが無くなるまで混ぜる。

その後はラップに包んで冷蔵庫で冷やす。

ここで、簡単にかわいくする方法がある。
さっき分けたプレーンとココアの生地を市松模様にするのだ。
やり方は難しくない。

まず、作りたいサイズに合う直方体の箱を用意する。4つ。
そこにそれぞれ半分ずつ生地を入れて、整形。
2つ目と3つ目の生地は型抜きクッキー用に残しておくから、ここでは使わない。
次に、整形した生地を市松模様になるようにして丁寧にくっつける。
そのまま冷やして切れば、かわいい市松模様の出来上がり。そのまま焼いていい。
ちなみに、このような型抜きしないクッキーをアイスボックスクッキーと言う。これはかなり楽だ。

焼く時には、オーブンの余熱機能を使ってオーブンを温めておくことが大切だ。
クッキーは、余熱も180度、焼く時も180度ぐらい。
その温度で15分焼く。心配なら17分ぐらい。

「できたぁ」

あ、こいつもできたのか。どれどれ。

……おい。
なんで型抜きして焼くだけでこんなにひどくなるんだ。

さては、あれだな?
焼いてからちゃんと時間を置かないで箸とかで触ったな?
クッキーって焼いた直後は柔らかいんだよ?
だから少し冷まして固くするんだよ?

……ま、私は上手くできたしいいか。

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