《MUMEI》 『弓手町駅』土曜、迅から突然電話がかかってきた。 『悪い、奏……今から弓手町駅来てくれない?秀次達と秀次達の相手、どっちも護ってほしいんだ』 「……分かった」 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 弓手町駅に着いてイーグレットのスコープを覗き、様子を窺う。 三輪と米屋が追い詰めている相手は、既に片腕を失っていた。 そろそろ三輪が鉛弾で相手の動きを止めるだろう。 『奏、秀次と米屋が畳み掛けるタイミングで間に入ってくれるか?』 「はいはい」 建物に身を隠しながら接近して、いよいよ割り込める位置で待機する。 三輪が鉛弾を撃って、相手が膝から崩れ落ちる。 三輪と米屋はそれぞれ弧月と槍弧月を構え直し、飛びかかった。 「これで終わりだ、近界民!!」 物陰から三輪達と相手の間に割り込んで、シールドを展開する。 「__両防御」 ガギギギギッ、という音が響く。 三輪と米屋は驚いたような表情になった。 三輪が口を開く。 「……頼む、霧宮。そこを退いてくれ。俺達は城戸司令の特命で動いている」 「そう……なら、余計に退けなくなった」 右手に出現させたキューブを2人に向ける。 細かく分割して発射すると、2人に細いワイヤーが絡みついた。 「ぐっ!?」 「うわっ!!」 砂利に顔面から突っ込んだ2人を見下ろす。 「……一度だけ言う。私の顔に、そして私のトリガーの有用性に免じて、ここは退いて」 「…………っ」 三輪が換装を解く。 「霧宮……何故、近界民を庇う?」 「別に近界民を庇ってるわけじゃない。そっちを人殺しにしたくないだけ」 私も換装を解いて、トリガーを握っていない方の三輪の手をそっと両手で包む。 「三輪が人を殺すのは、見たくないの」 ぽかんとしてしまった三輪。 その手に小ぶりなビニール袋を乗せる。 「……これ、昨日作ったクッキー。三輪隊全員分用意したから、戻ったら食べて」 「あ、ああ」 袋を見つめたまま曖昧な返事をする三輪。 そんな三輪を置いて、私は三雲のいるホームへと上がるのだった。 前へ |次へ |
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