《MUMEI》
俺の方向音痴が祟った瞬間。
兄貴から宣告されて人間界に来たはいいものの…。

「どこだ、ここ…」

人間界とは無縁の生活を送っていた奴だから勿論、方向音痴。情けねぇ。

ピーピー

兄貴から貰ったスマホ?何かわかんないけど機械が鳴った。言い出しっぺからだ。

「もしもし、今どこだよ」

「悪い、講義が長引きそうだからそっち行けねぇわ」

はぁ!?言い出しっぺですよねぇ?置き去りっすか。

「しかもここ、どこ…」

「大丈夫。そっちに俺の友人の妹行くから」

いや、誰だよ。

「誰だよ」

「お前のルームメイト。あ、悪い、切る」

切りやがった。後でホント殺してやる。

とにかく、そのるーむめいとって奴を待ちましょか。

数時間後…。

いや、明らかに遅くない?

兄貴の電話からとうに数時間は経ってやがる。アイツ、俺を騙したな…。

「どうしてくれんだよ…」

途方に暮れていた時、1人の女が目の前に立ち塞がった。

「あの、君が北見來武君?」

はぁ、やっと来た。

「そうだけど、どちらさん?」

「明日香と言います。あなたのお兄さんに頼まれて来ました」

ふぅん。明日香ね。こいつ…。

「遅い」

「ふぇ?」

んな間抜けな顔されると困るんだが。

「明らかに俺はここで数時間お前を待っている。喧嘩売ってんの?」

見る見るうちに明日香の表情が怒りに変わった。

「それはこっちの台詞よ。集合場所に居ないんだから捜してたのよぉ!」

「はぁ?ここが集合場所だろ」

「違うわよ、もっと北よ」

え…、もしかして、場所間違えたってことぉ?

「う、うそぉ…」

変な空気になった。

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