《MUMEI》
『嵐山隊』
4日後の深夜、私は迅に連れられて警戒区域の外れまで来ていた。

「奏、お前は戦闘が始まっても暫く隠れてろ。んで嵐山達に加勢。2人ぐらい緊急脱出させたらおれの方に来てくれ」
「分かった」

短く返事をして、迅のいる辺りが見える高層マンションに身を潜める。

A級隊員達が現れた。

(……空閑狙い、か……?)

そもそもこの間の強襲程度であの近界民ブッコロ司令が諦める訳がない。
だからこそ迅は空閑を玉狛に招き入れ、ボーダーの隊務規定で護ろうとしたのだ。

(……さて、お仕事開始かな)

迅が風刃を抜いたのを確認して、私は嵐山隊との合流地点へ向かった。

☆ ★ ☆ ★ ☆

「__うちの隊を足止めするなら、たぶん三輪隊ですね。三輪先輩の鉛弾がある」
「流石は時枝。……ただ、出水も来ると思う」
「「「ッッ!?」」」

突然私が出てきたのに驚いて、3人が各々の手にした銃を構えた。

「味方殺す気か……?」

思わずそう呟いてしまった。
申し訳なさそうな顔の嵐山さんに頭を撫でられる。

「あ、霧宮さんか。ごめんな」
「別にいいですけど……米屋と出水の首は貰いますよ」
「分かった。俺たちは援護に回るぞ」
「「了解」」
「おっ、来たな」

迅が路上を眺めやる。

「うまいことやれよ、嵐山も奏も」
「そっちもな、迅」
「できるだけ早めに終わらせるから」

私が高層マンションに戻ったのを確認したらしい嵐山さんは、三輪達の前に立ちはだかった。
私は佐鳥の戦闘体に通信を接続する。

「佐鳥、米屋仕留めるから出水の釣りで撃って」
『佐鳥了解〜。あ、それ木虎にも伝えましたか?』
「一応みんな援護で動くって言ってたから察してくれるはず」

通信の向こう側から、佐鳥の苦笑が零れる。

『先輩らしくないすね』
「迅の方に加勢しなきゃいけないから、多少は手荒な手段も使う」
『それもそっか』

そこで通信は切断されて、スコープを覗くと出水は攻撃体勢に入っていた。

ドッ、と闇を閃光が切り裂く。
出水の頭を的確に捉えていたそれは、私の予測通り分厚い半透明の盾で阻まれた。

スコープで米屋の動きを追い、確実に仕留められる箇所を撃ち抜く。
米屋の体は流星となって本部へ帰還していった。

急いで隣の家屋へ避難すると、数秒前までいたマンションが轟音を上げて崩壊した。

(出水の爆撃……!!)

このままだと隠れ場所を失う。
その時、嵐山さんから通信が入った。

『霧宮さんは迅の方へ加勢に行け。こいつらは俺たちが相手する』
「……っ、ありがとうございます」

私は、思いきって家屋を飛び出した。
その瞬間追ってくる炸裂弾。
それらをかわし、ついでに当真さんを緊急脱出させて、迅の隣へ降り立った。

「ごめん、嵐山さん達に任せる羽目になった」
「いや、向こうは任せて正解だろ」
「……それもそっか」

薄紅色に光る刀身を抜き放つ。
それを見た太刀川はにやりと笑った。

「奏ともやり合えるのか……こりゃ楽しそうだ」
「悪いけど、私はあくまでオマケだから」

旋空を放てば、いとも容易く菊地原と歌川の首は胴体からずり落ちる。

「私の仕事は、邪魔者の排除だよ」

風間さんは鋭い目で私を睨めつけた。

「流石の腕だ……まさか、 “銀狼” が帰ってきていたとはな」

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