《MUMEI》

_水無月

暗い闇の中から聞こえた懐かしい愛おしい声

「お前様…?」

辺りを見渡しても声の主は居ない

「何処に居られるのですか…?」

寂しい、逢いたい、あの温もりをもう一度感じたい

「私は寂しゅうございます…早く、逢いたいのです」

_水無月よ、こっちだぞ

はっきりと聞こえた声の方を向くと眩い光に包まれた

懐かしい暖かい温もりに思わず頬が緩む

「あの時と変わっておりませぬなぁ」

その声と同時に桜の花びらが舞う

目の前には見知らぬ女子

あなや、愛おしい人の子か

まるで林檎の様に真っ赤にさせた顔に思わず笑が零れる

「私の名は水無月宗近。三日月宗近とは夫婦刀と呼ばれております。どうぞ、よろしくお願い致します」

これでもかというほどに見開かれた大きな瞳に写る自分の姿

そして、不意に感じたい懐かしい香り

そちらに視線をずらせば、恋焦がれた懐かしい愛おしい人

「あなや…」

ずっと、ずっと逢いたかった

「お前様…?」

そう呼べばふわりと優しい笑を浮かべ抱きしめてくれる

「あぁ、水無月よ。ずっと逢いたかったぞ」

「っ私もです…ずっとお慕いしておりました…っ」

溢れそうになる涙に気づいたのか三日月は優しく拭ってくれる

「相変わらず愛いなぁ」

蕩けるような甘い声色に思わず笑が零れる

やっと、出逢えた

愛おしい人よ

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