《MUMEI》

本丸内を案内してもらい早数十分

ここのお屋敷は随分と広い様です

「こんなに広いと迷ってしまいそうです…」

「はっはっはっなぁに、俺が着いておるだろう?」

「!…ふふっそうでしたね」

口元を着物の袖で隠しながら笑う水無月の愛いことよ

「そうだ、お主に見せたいものがあるのだ」

「?何でしょう」

「それは見てからのお楽しみ、だ」

「ふふっそれは楽しみですなぁ」

「それでは、目を瞑ってくれぬか?」

「わかりました」

そっと目を閉じればゆっくりとした足取りで引かれる

歩く事数分

「開けて良いぞ」

そう言われてゆっくり開く

するとそこには大きく綺麗に育った桜

「あなや…何と綺麗な…」

ほぅっと息を吐いてしまうくらいに立派に育っていた

「はっはっはっ気に入ったか?」

「はい、とても…それに、お前様と見れて私は幸せです」

ふわりと微笑む水無月の周りには桜の花びらが舞う

その姿はまさに天女の様に美しい

「あなや…これぞまさに、絶景かな」

ボソリと呟いた俺の声はそよ風と共に流れて行った

そろそろ本丸に戻るかと思い二人で来た道を辿っていると縁側から主が俺達を呼んでいた

…女子なのにあそこまで大きな声がでるとは…

少し呆れている俺の隣ではクスクスと水無月が笑っていた

「この本丸に来れて良かったです」

そう言って微笑むものだから思わず抱きしめてしまう

そして触れるだけの口付けを交わす

白い肌が赤くなっているのを見てまた心が踊り出す

「お主は真に愛いなぁ」

はっはっはっと笑う俺に「もう…」と言って恥ずかしげに笑っていた水無月をみてまた少し安心した



俺達を待っていた主が顔を真っ赤にしていたのにまた笑った

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