《MUMEI》
序章
「申し上げます。申し上げます。旦那さま。

あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。

悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ」

はて、それは誰に言ったのか。

太宰治著、駆込み訴え。

紡がれた一文字一文字からユダの心が崩れ落ちていく。

ぬらり、と狂気が指先から滴る。

……はたして、この終結は。

一人の阿呆は考えた。



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