《MUMEI》
出会い
 帰りは4時半頃だった。
自転車を押して帰るのがおっくうに思われた。
そんな時に、彼が現れたのだった。
 「どうしたんですか?」
どこからともなく降ってきた声に私は驚き、初めて後を振り向いた。
そこには、身長が170pくらいのほっそりとした人が立っていた。
私はかるく微笑みながら言った。
 「いいえ、ちょっと自転車のタイヤがパンクしてしまってー…。気にしないで下さい。」
そう言うと、その人はすこし何かを考えた。そして思いついたように言った。
 「それなら僕の自転車を使って下さいよ。明日ここにもどしといてくれれば、それでいいですからどうぞ。」
 私は思いもよらない提案に、あっけにとられてしまった。
「でもそんな迷惑をかけるわけにはー…。あなたが一番困るでしょうし…」
ところが彼はこう続けた。
 「いいんですよ、僕の家はここから近いことだし。それにきみ、なんだか顔色が悪いみたいだよ。
いえ、失礼しました(^^ゞ。でも、疲れているんじゃありません?」
 そう言われると、私も借りたほうが良いように思った。
そして、
「じゃあすみません。お借りしてもよろしいですか?」と言った。
 彼はにっこりと微笑み、自転車をとりに行った。

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