《MUMEI》
プロローグ
__月野芸能プロダクション、通称ツキプロ。
ツキプロに所属するアイドルは多く、今をときめく期待の新星アイドルグループであるSix GravityとProcellarumもその一員である。

そしてここに、2つのユニットの__2つのユニットは合わせてツキウタ。と呼ばれている__マスコットであるツキウサ。がいる。

その黒い身体には白いリボンを結ばれた首以外にくびれも何もないが、それでもツキウタ。のメンバーは「ダイエットさせた方がいい」とは言わない。どうにもならないからである。

ツキウサ。は少し前までただのぬいぐるみだった。
しかしそのぬいぐるみに、Procellarumのリーダーで白の魔王様こと霜月隼が怪しげなおまじないをかけたのだ。

するとツキウサ。は動き出し、メンバーの様子を見守り、助け始めた。
しかし助ける、といっても大したことではなく、毎朝郵便物を取りに行ったり、書類整理を手伝ってくれたりするだけなのだが……

結論として、メンバーは何も言わず傍で慰めてくれたり仕事を手伝ってくれたりして尚且つかわいいツキウサ。にベタ惚れ。
Six Gravityの黒い王様こと睦月始に至っては、自分がオフの日は毎晩のように自室へツキウサ。を連れ込んで抱きしめて眠るようになった。

さて、そんなツキウサ。は今日も毎朝の日課となってしまった郵便物の受け取りへ。

ツキノ寮の管理人は霜月の起こす不可解な行為に一定の理解がある人で、割とツキウサ。が動いていることは気にしていない。

なので、ツキウサ。は管理人室の窓越しに軽く挨拶代わりのノックをして郵便物を取りにポストの方へ向かう。

ポストの中には、一枚の黒い封筒だけが入っていた。

ツキウサ。は考えた。

今日は霜月以外の全員が出払っている。
つまり、この封筒は霜月に渡しさえすればオールOKである。

よし、霜月のところへ行ってついでに撫でてもらおう。

そう心に決めて、ツキウサ。は寮の階段を登り始めた。

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