《MUMEI》

「ひどいなぁ、僕は黒月のお願いを素直に聞いただけなのに」

眼鏡の奥の瞳に、嗜虐心から来るらしい暗い色が灯る。

「黒月、かわいくおねだりしてみて?」
「は……?」
「かわいくおねだりできたら、もっと気持ちよくしてあげる」

もっと、気持ちよく。

快楽で蕩けた頭では、もうまともな思考ができなかった。

「っ、俺の欲情乳首、触って、穴、いじって、いかせてくれっ」

自分でTシャツを捲って赤い蕾を見せつけて、更に指でそこをいじる。
月城はふわふわとした笑顔を崩さずに言った。

「んー、もう一息」
「う……俺のカラダ、好きにして、っん、月城のおっきいの、くれ……」

胸を強調する姿勢で涙目になりながらもやり遂げたんだから、流石にOKであってほしい。

「かわいいね……よくできました、かな?」

なぜか疑問形なのが一瞬気にかかったが、それすらもすぐに快楽の波に押し流される。

「ん、うあ、ああっ、ひ、っ」

女みたいな声しか上げられなくなった俺の唇を、月城は何度も舐める。

「黒月の唇、美味しい」

ふわりと笑った月城の瞳には、快楽でどろどろに蕩けきった俺の姿。

「こんなところ、メンバーの子たちに見られたくないね」

月城がそう言った瞬間、部屋に誰かが訪ねてきた。

「あ、誰だろう?行っておいで」

月城の穏やかな微笑みに、俺はよろよろと立ち上がって服を整えてから玄関へ向かう。

「……はい、どちら様ですか?」

ドアの向こうに声を投げかけると、昨日も聞いた声が耳に響いた。

「あ、黒月さん!すみません、休みなのに押し掛けて」
「海?どうかしたのか?」

疼く身体を抑えながら、話を聞く。
海の話を要約すると、「明日からのロケで隼がダレそうなら容赦なくシバけ」ということだった。

「ん、わかった」
「すみません、お願いします。あ、あと」

まだあるのか、とため息をつきかけたその瞬間、いつの間に近づいていたのか月城の手が再び胸を弄り始めた。

「っ、ど、した?」
「あの、大したことじゃないんですけど……月城さん、無理させ過ぎちゃダメですよ」

……え、いや、これ。

「……海くんには、バレてたみたいですね?」
「バレバレですよ……俺以外は気づいてないっぽいからまだいいようなもんですけど、年少組の前では絶対バレるようなことしないでくださいね?教育に悪いので」
「善処します」
「それYESじゃないですよね。あ、これ以上は邪魔者になりそうなので帰ります」

俺の返事も待たずに、海の足音が遠ざかっていく。
振り向くと、月城は心底楽しそうににこっと笑って俺をリビングに連れ戻した。

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