《MUMEI》

「誕生日おめでとう。はい、プレゼント」
「…ありがとう」

綺麗な模様の包装をそっと開ける。
箱の上に乗せられたメッセージカードは見慣れた月城の字。
箱を開けると、中には兎の刺繍があしらわれたワインレッドのネクタイが鎮座していた。

「この間地方ロケで見かけて、2種類あったしこっちの色は黒月に似合うかなって」
「それは嬉しいが…兎か…隼辺りにイジり倒されそうだ」
「がんばれ」
「感情がこもってない応援はやめてくれ」

それから、アイドルたちに貰ったプレゼントを開封して確認する作業。
グラビからはそれぞれのメッセージカードと12〜5月の誕生石がついたストラップを6つと(なぜか)胃薬、
涙からは安眠できるアロマ(なぜ寝つきが悪いと知っている)、
郁からは新しいジャージ(なぜ服のサイズを知っている)、
陽からはふわふわもちもちのクッション(なぜこの手触りが好きだと知っている)、
夜からはマネズウサの刺繍が施されたハンカチ(どうやら夜のお手製らしい)、
海からは新しいグラス2つ(いい笑顔で親指立ててたから多分あいつは俺と月城の関係に気づいてる)、
一番ヒヤヒヤしつつ開けた隼からのプレゼントは案外普通のブレスレットだった。
ついていたメッセージカードの内容曰く『邪気祓い』の効果があるらしい。魔王様が言うと本当に効果がある感じがする。

「…黒月は、皆から愛されてるね」
「お前もだろ」
「だといいな。…黒月、ちょっといいかな…?」

声色が突然真剣になって、どうかしたのかとそちらに向き直る。
すると、月城は鞄から小さな紺色の箱を取り出した。

「黒月、僕はこれから先もずっと君を大切にすると誓うよ。だから」

月城が箱を開けると、きらりと光る指輪がそこにあった。

「この指輪、受け取ってくれるかな?」
「〜〜〜〜っ、お前…ほんと…」

ずいっと左手を差し出す。

「…黒月?」
「……つけてくれよ」
「ふふ、うん。分かった」

俺の手を取って薬指に指輪を填める月城。
銀色の指輪は元からそこにあったかのような顔をして納まった。

「ぴったりだね」
「…お前は?つけないのか?」
「つけるよ。待ってて」

月城は鞄に手を突っ込んでごそごそやって、それから俺の目の前に指輪の入った箱と左手を差し出した。

「つけて?」
「分かってる」

薬指にぴったりと納まる指輪。
離れようとすると、右手で抱き寄せられた。

「う、わっ」

意図せずして月城を押し倒すような体勢になってしまう。

「つ、月城、大丈夫か?」
「うん、平気」

そのまま顔を引き寄せられて、唇が重なる。

「…唇、熱いね。照れてるの?」
「うるさい…」

何度も重ね合う唇からじわじわと体温が融け合う。

「ん…なあ、ねむい…」
「お風呂は…?」
「明日で、いい…ん」
「そっか…ん、ねえ…泊まっていっても、いい…?」
「いい、けど…お前こそ、風呂…」
「明日で、いいや…」

そのまま何度も口づけを交わしながら、俺と月城は眠りについた。

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