《MUMEI》

「おう、司書。今日も頑張ったじゃねえか」

研究の成果を確認してほっと息を吐き出す司書の肩に、ぽんと手を置く。

「……菊池先生が手助けしてくださったからです」

はにかむ司書の手の中にある資料を取り上げて、執務室の横に備え付けられた仮眠室に押し込んだ。

「ほれ、ちょっと寝ろ。根詰めすぎだ」

「う……はい、おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

大きい体を小さくして、シャツの首元の鈕を開けてネクタイを緩める司書。
畳に寝ころんで直ぐ寝息を立て始めたその体にそっと毛布をかける。

「……可愛い寝顔だことで」

目の下にずっと居座っている隈をそっと撫でると、司書は擽ったそうに身を捩らせた。

「ん、う」

「ったく……全然休まないとは聞いてたが、これはひどいな」

転生した頃より少しこけた頬をひと撫でして、俺も横になった。

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「……まだ起きないのか」

日がずいぶんと高くなっても、司書の起きる気配はない。

「起きないと拐うぞ?」

つい、と指先で輪郭をなぞる。

「……本当に、拐うからな」

司書の手に俺の手を重ねて本を開く。
仮眠室の中に潜書する時のような光が広がった。

目を開けば、俺の書いた世界。
少し衝撃があったからか司書が小さく声を漏らし乍ら目を覚ました。

「ん……っ、ここ、は……?」

「よう、おはようさん」

「あ、おはようござ……ってここどこですかっ」

「ああ、俺の本の中だな」

「平然と言う……」

呆れた表情の司書をそっと抱きしめる。

「急に連れてきてすまん。……だが、どうにも耐えられなくなってな」

「な、にが」

「アンタの視界に他の奴が入るのが、だ」

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