《MUMEI》 本物の心。暗い。 あまりにも暗い部屋に、彼は居た。 彼は膝を抱え、小さくしゃがみこんでいた。 最初は不在と勘違いしそうになったけど、そんなはずないと入ってみて正解だった。 彼は分裂した今までの彼とは違い、目に見えて異質だった。 まるで黒い絵の具で塗り手繰るように闇を生んでいる。 その闇に触れて流れてくる正体は嫌悪感、罪悪感などを始めとして、様々な負の感情だった。 彼自身が自分の存在を認めず、消え去ろうとしている。 つまり、自我の放棄。 神名くんの話では、罪悪感を抱き続けてしまったばかりに架空の現象で自らを縛り、そのプレッシャーに耐えきれず、心が壊れてしまったらしい。 「さ、佐久間くん………………?」 白状すると、神名くんから話を聞いても何が何だかわからない。 今だって記憶ははっきりしておらず、佐久間新斗のことなど何も知らない。 しかし、不可解な事は自覚していた。 神名くんの質問にとっさに出た答えや、今まさにわたしが感じている心。 胸が痛くて痛くて、裂けてしまいそうだ。 この心は本当にわたしのものなのだろうか。 いや、本当は自分でもわかっている。 この心は本物だ。 この感情はわたしのものだ。 別の世界とか難しい話はもう関係ない。 心のままに行動する。 だからわたしはここに来たんだ。 ちゃんと気持ちを伝えなきゃなんだ。 「自分を嫌わないで、新斗くん」 前へ |次へ |
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