《MUMEI》
撮影開始

鍼灸師用の教科書の写真モデル──

いろんな依頼を受ける事務所だな。

書店にはツボとかマッサージの家庭用の解説書が並んでいる。

人体に365あるというツボの位置や、経絡(けいらく)と呼ばれる「気」のルートをイラストや写真で図解している。

正確なのはもちろん写真のほうだ。
ただし、男性モデルを使った本は一冊もないだろう。

まじめな話、起伏に富む女体を使うほうが分かりやすいからだ。

実は、私の実家にもそういう本が一冊あった。

ビキニの女性モデルを採用していて、ツボの位置からマッサージのやり方まで網羅した本だった。


スタジオにいるのは、白衣の男性三人とカメラマンと助手。女性は撮影助手だけだった。

そして、真っ裸の私。

プロの鍼灸師向けのマニュアルである。人体の見本として手抜きはできなかった。

まずは、ツボの分布図用としての写真を、直立の姿勢で前後と横から撮影された。
カメラは固定で、私のほうが体を回して撮る。
予想以上に多くフラッシュが光った。

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